村尾誠一

村尾誠一氏は1955年、東京都武蔵野市に生まれた日本文学者である。その専門は日本古典文学、中でも中世和歌の研究に深い造詣を持つ第一人者として知られる。

東京大学で博士号（文学）を取得後、東京外国語大学に長く在籍し、教育と研究に尽力した。助手、講師、助教授を経て2002年には教授に就任。大学院重点化に伴い、総合国際学研究院、そして国際日本学研究院と所属を移しながら、後進の育成と研究活動に邁進した。2021年に同大学を定年退職し、名誉教授の称号を授与されている。

彼の研究は中世和歌の世界に深く入り込み、特に『新古今和歌集』以降の和歌史を新たな視点から考察している。2010年に発表した博士論文『中世和歌史論　新古今和歌集以後』は、その集大成とも言うべき重要な研究成果であり、中世和歌研究に大きな影響を与えた。同書は、単なる和歌の解釈にとどまらず、歴史的・社会的な背景を踏まえた上で、和歌の表現や作者の意図を精緻に分析している点が評価されている。

村尾氏の業績は単著に留まらない。多くの共著や校訂にも携わり、日本古典文学研究の進展に貢献している。『歌ことば歌枕大辞典』のような大規模な辞典編集にも参加し、古典文学研究の基盤整備にも力を注いできた。また、飛鳥井雅世の『新続古今和歌集　和歌文学大系』や『竹乃里歌　和歌文学大系』といった重要な古典の校訂にも携わり、正確で信頼性の高いテキストの提供に努めてきた。さらに、後進の育成にも力を入れ、多くの研究者を指導してきた。

著書としては、『残照の中の巨樹　正徹』、『中世和歌史論　新古今和歌集以後』、『コレクション日本歌人選　藤原定家』、『コレクション日本歌人選　会津八一』などがあり、いずれも古典文学研究において高い評価を得ている。これらの著書では、複雑な古典文学作品を分かりやすく解説することで知られ、専門家だけでなく、一般読者にも広く親しまれている。

村尾誠一氏の研究は、単なる学問にとどまらず、日本文化の深遠な理解へと導く重要な役割を果たしている。その功績は、日本古典文学研究に多大な貢献をしただけでなく、後世へと繋がる重要な遺産として、高く評価されるべきであろう。彼の今後の活動にも期待したい。

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