杖立温泉

杖立温泉：歴史と自然が織りなす癒やしの空間

熊本県阿蘇郡小国町と大分県日田市にまたがる杖立温泉は、約1800年の歴史を持つ、由緒ある温泉地です。古くは応神天皇の産湯として利用されたという伝説も残っており、その歴史の深さを感じさせる風情が魅力です。

温泉の特徴

杖立温泉の泉質は塩化物泉で、約100℃という高温の湯が湧出しています。杖立川沿いの谷間に大小様々な旅館が19軒軒を連ね、湯治客から観光客まで幅広い層に親しまれています。

共同浴場は「元湯」「薬師湯」「御前湯」「流泉湯」「第二自然湯」の5軒があり、それぞれ異なる趣を楽しむことができます。また、足湯のある公園も整備され、気軽に温泉を満喫できる環境が整っています。

温泉街全体は耶馬日田英彦山国定公園に含まれており、自然豊かな環境の中で温泉に浸かることができます。

温泉名の由来

杖立という地名は、弘法大師が湯治により健康を取り戻し、杖を捨てて帰ったという伝説に由来すると言われています。また、別説として、大分県日田市側にみられる「津江」という地名との関連性が指摘されており、地理学者の松尾俊郎氏は、この地名が崖を意味する可能性を示唆しています。

江戸時代には熊本藩の御前湯が置かれ、現在も共同浴場として残っています。明治時代以降は、野口雨情をはじめとする多くの文化人も訪れ、その魅力を伝えています。

歴史と変遷

戦後の昭和28年には西日本水害により大きな被害を受けましたが、その後復興を果たし、「九州の奥座敷」として賑わいました。しかし、時代の変化とともに客足が減少し、近隣の黒川温泉などの台頭により、一時的に衰退傾向となりました。

近年では、温泉情緒や歴史的町並みを活かしたまちづくりが盛んになりつつあり、背戸屋と呼ばれる伝統的な町並みの散策や、蒸し湯などの独特の温泉体験が観光客を惹きつけています。

こいのぼり祭り

5月には、杖立川に3000匹～3500匹ものこいのぼりが泳ぐように飾られる「こいのぼり祭り」が開催されます。これは全国でも有名なイベントであり、昭和55年頃から始まったこの祭りは、杖立温泉の春の風物詩となっています。

こいのぼり祭りに続き、5月27日、28日には杖立温泉祭が開催され、温泉街の特設舞台では、杖立の青壮年による伝統的な芝居が上演されます。この芝居は明治時代から続く歴史あるもので、かつては温泉街全体を巻き込む一大イベントでしたが、現在は夜の芝居のみとなっています。

アクセス

杖立温泉へのアクセスは、公共交通機関と自家用車の両方で可能です。

公共交通機関
JR九州豊肥本線阿蘇駅から九州産交バス
JR九州久大本線日田駅から日田バス
西鉄天神高速バスターミナル・博多バスターミナルから高速バス
自家用車
九州自動車道熊本インターチェンジから国道57号・国道212号経由で約63㎞
* 大分自動車道日田インターチェンジから国道212号を南下して約25㎞

温泉街へは、杖立トンネルではなく、脇にある旧道を通るのがおすすめです。

杖立温泉は、歴史と自然に恵まれた癒やしの空間です。ぜひ一度訪れて、その魅力を体験してみてください。

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