杜文煥

杜文煥（と ぶんかん）

杜文煥は、明末の動乱期に活躍した軍人です。字は弢武といい、蘇州府崑山県の出身です。彼の生涯は、明朝の衰退とそれに伴う混乱、そして南[[明]]の滅亡まで、激動の時代を象徴しています。

生い立ちと初期の軍歴

杜文煥は、杜桐の子として生まれました。その出自から官職を得て、延綏游撃将軍を皮切りに、参将、副総兵へと昇進を重ねました。1615年には、寧夏総兵官に抜擢され、オルドス部の侵攻に対して果敢に立ち向かい、これを撃退しました。その後、延綏総兵官として、敵を靖辺堡、保寧堡、長楽堡で破り、多くの敵兵を討ち取りました。西路の火落赤や卜言太が降伏するなど、その武勇は周辺地域に知れ渡りました。

オルドス部との戦い

沙計が度々辺境を侵犯した際には、杜文煥はこれを撃破し、帰順させました。しかし、沙計は再び吉能や明愛と結託し、高家堡や柏林堡に駐屯して、封王や褒賞を要求しました。杜文煥はこれを許さず、陣営を襲撃して多数の敵兵を討ち取り、火落赤の諸部落に誓約を立てさせました。その後も沙計は、伏兵を使い都指揮の王国安を殺害し、猛克什力と合流して双山堡や波羅堡を攻撃しましたが、杜文煥はこれを撃破し、敵を徹底的に追撃しました。当時、オルドス部は10万を号していましたが、その内部統制の弱さから、しばしば敗戦を喫していました。最終的に沙計らは明に帰順し、延綏の混乱は鎮静化しました。その後、杜文煥は病のため一時帰郷しました。

遼東救援と失脚

1621年、杜文煥は再び延綏に駐屯しましたが、遼東救援の命令を受けながらも、オルドスを攻撃し、その根拠地を突きました。これにより、オルドス諸部から恨みを買い、固原や慶陽に侵入され、延安を包囲される事態となりました。この責任を取らされ、杜文煥は解職され、蟄居を命じられました。しかし、奢崇明の反乱が発生すると、川貴総督の張我続の要請で救援に向かいました。

反乱鎮圧と再度の失脚

1622年、成都に到着した時にはすでに包囲は解けており、杜文煥は諸軍と共に重慶を奪回しました。奢崇明が永寧に逃亡した後、杜文煥は総理に抜擢され、四川・貴州・湖広の全軍を統制することになりました。しかし、反乱を鎮圧できず、病を理由に官を去り、延綏での失敗も重なり、一兵卒として辺境防衛に就くこととなりました。その後、1627年に再び起用され、寧夏に駐屯しましたが、寧遠・錦州からの後金軍侵攻の警報により、救援に向かうよう命じられ、右都督に進められ、関門の守備を担当しました。しかし、またも病のため官を去りました。

農民反乱との戦いと南[[明]]

1628年、重慶での功績により、指揮僉事の位を世襲することを認められました。1630年には、陝西での農民反乱鎮圧のため、総督の楊鶴に要請され、延鎮事と固原軍の指揮を執りました。反乱軍を度々撃破するも、反乱は拡大の一途をたどりました。山西総兵の王国樑が王嘉胤に敗れた後、杜文煥は提督となり、曹文詔と共に河曲に駆け付けましたが、反乱軍の神一元に敗北しました。その後、杜文煥は延川の難民を殺害したとして弾劾され、獄に下され職を剥奪されました。

1642年、総督の楊文岳の推薦で任用され、元の官職に復帰しますが、功績を上げられず、病を理由に再び帰郷しました。1644年、李自成軍が北京を陥落させると、南京に南[[明]]政権が成立し、杜文煥は左柱国、太子太傅の位を加えられ、中軍都督府を管掌しました。しかし、翌1645年、清軍の攻撃により南京が陥落し、金山に逃亡中に亡くなりました。

子息、杜弘域について

杜文煥の子である杜弘域もまた軍人として活躍しました。父が遼東救援を命じられた際、父に代わって寧夏に駐屯しました。その後、南京の池河営や浦口営を指揮して反乱軍の南方進出を防ぎ、功績を挙げました。南[[明]]の弘光帝に仕え、崇明伯に封じられましたが、南京陥落後は崑山に帰郷しました。隆武帝政権下では侯に爵位を勧められましたが、福州に赴くことなく亡くなりました。

参考文献

* 『明史』巻239 列伝第127

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