来栖三郎 (外交官)

来栖 三郎（くるす さぶろう）

来栖三郎は、1886年3月6日に神奈川県横浜市で生まれ、1954年4月7日に永遠の眠りについた、日本の著名な外交官です。彼は長い外交官としてのキャリアを経て、特に日独伊三国同盟の調印や日米交渉において重要な役割を果たしました。その生涯を振り返ると、彼の業績は非常に興味深く、また波乱に満ちています。

生い立ち

来栖は、旧制横浜第一中学校を卒業後、1909年に東京高等商業学校（現在の一橋大学）の専攻部領事科を修了しました。この学び舎での経験は、彼の外交官としての道を開く重要な基盤となりました。

外交官としてのキャリア

彼は、1909年に外交官及び領事官試験を合格し、その後外務省に入省しました。以降、漢口やホノルル、ニューヨーク、シカゴ、マニラなど、国内外で様々な役職を歴任します。特に1928年から1936年にかけては、駐ペルー特命全権公使、外務省通商局長、駐ベルギー特命全権大使と、重要なポジションを担っていました。

1939年には、ナチス・ドイツにおいて駐独特命全権大使の職に就き、日独伊三国同盟の調印に立ち会います。このとき彼は、日本側の代表として特別な役割を果たしました。この同盟は日本にとって重要な戦略的パートナーシップであり、来栖の影響力は図られたものでした。

その後、来栖は日米前線交渉に参加し、特命全権大使としてアメリカに派遣されます。彼は、当時の駐米大使である野村吉三郎を補佐し、日本の立場をアメリカに伝える役目を果たしました。しかし、彼の過去の背景から、アメリカ側からは疑念の目を向けられることも多く、特にコーデル・ハル国務長官は彼を厳しく評価していました。このように、日米交渉の中で来栖は困難な立場に置かれ、結果的に彼の任務は期待された成果を上げられないままでした。

国内でも、陸軍内の一部には彼に対して批判的な意見が存在し、戦争突入を望む声もありました。

戦後の公職追放

1942年、日本とアメリカの開戦に伴い、来栖は2回の戦時交換船で帰国して以降、1945年には外交官を退官しました。戦後、彼はGHQによって公職追放の措置を受けますが、1951年には追放が解除されました。しかし、1954年に彼はこの世を去りました。

受賞歴と家族

来栖は1944年に正三位を授与され、1940年には紀元二千六百年祝典記念章を受けました。彼の家族は多彩で、父は横浜ドック社長を務めた壮兵衛、妻はアメリカ人のアリス・ジェイ・リトルです。アリスは来栖の晩年を支え、多くの芳しい記憶を遺しています。長男の良も軍人としての道を歩みましたが、戦渦の中で命を落としました。彼の娘にあたる扶沙子は、星野仙一の妻でもあります。

著作と影響

来栖は外交官としての経験を基に、いくつかの影響力のある著作を残しています。『挑戦者米国に与ふ』や『泡沫の三十五年 外交秘史』などの著作は、当時の外交状況を知る貴重な資料となっています。彼の人生と業績は、日本の外交史において重要な位置を占めており、戦争とその後の混乱の中での苦悩を反映したものとして、多くの人々に語り継がれています。

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