来迎院 (京都市東山区)

来迎院：歴史と文化が息づく東山の古刹

京都市東山区泉涌寺山内町に位置する来迎院は、真言宗泉涌寺派に属する寺院です。明応山を山号とし、本尊は阿弥陀如来。泉涌寺の塔頭として、古くから深い歴史と数々の伝承を有する由緒ある寺院です。別名、禁裏御菩提所泉涌寺別当、御寺別当来迎院とも呼ばれ、泉山七福神巡りの第四番札所（布袋尊）でもあります。

空海とのかかわりと、激動の時代

寺伝によれば、来迎院は弘法大師空海によって開創されました。大同元年（806年）、空海が唐で感得した三宝荒神像を安置したのが始まりと伝えられています。その後、建保6年（1218年）には泉涌寺の長老、月翁智鏡律師が諸堂を整備し、泉涌寺の子院となりました。しかし、応仁の乱（1468年）の兵火により伽藍は焼失し、荒廃の一途を辿ります。

天正2年（1574年）、中興の祖である舜甫明韶が織田信長の援助を受けて再興。慶長2年（1597年）には前田利家、さらに徳川家からも援助を受け、経済的基盤も強化され、ようやく復興を果たしました。

大石内蔵助と赤穂義士の隠れ家

元禄14年（1701年）に発生した赤穂事件。浅野内匠頭長矩の切腹、赤穂浅野家のお家断絶後、家臣・大石良雄は泉涌寺の長老で来迎院の住職でもあった卓巖和尚を頼り、来迎院の檀家となります。山科に居を構えながらも、多くの時間を来迎院で過ごしたと伝えられています。

来迎院には、大石良雄が書院を設け、境内に湧く「独鈷水」を利用して茶室「含翆軒」と池泉回遊式庭園「含翆庭」を造営しました。ここで、元赤穂藩士らと討ち入りの密議を重ねたとされています。また、現在も来迎院本堂に安置される勝軍地蔵像を念持仏として祈願したと伝えられています。

明治時代の廃仏毀釈で荒廃したものの、大正時代に修復され、現在に至ります。大正時代には、玄暁住職によって、大石良雄の遺徳を偲び、毎月14日に含翆軒で茶会が催されるようになり、現在も「含翆会」として継続されています。

貴重な文化財と信仰

来迎院には数多くの貴重な文化財が所蔵されています。

重要文化財（国指定）：木造荒神坐像、木造護法神立像5躯
京都府指定有形文化財：荒神堂（建造物）
* その他：阿弥陀如来像、勝軍地蔵像、幻夢観音菩薩坐像、大石良雄肖像、大石良雄遺愛茶釜（銘・阿弥陀堂）など

空海が唐で感得したと伝わる三宝荒神像は、荒神堂に安置されています。「胞衣荒神」とも称され、安産のご利益があるとされ、皇后宮安産の勅願所として信仰を集めています。本尊の阿弥陀如来像は、運慶作と伝えられています。

また、霊元天皇の寵愛を受けた女官、小少将局ゆかりの幻夢観音菩薩坐像も安置されています。小少将局の娘の目の病気が、来迎院の「独鈷水」で治ったという伝承も残されています。

毎年1月の第2月曜日（成人の日）には、泉山七福神巡りの第四番札所として多くの参拝客が訪れます。

アクセスと施設

来迎院へのアクセスは、京阪電鉄またはJR東福寺駅から、または京都市バスを利用できます。

境内には、本堂、荒神堂、鎮守社、書院、含翆軒、客殿、庫裡、山門、含翆庭、心字池、独鈷水、御願石などがあります。

来迎院は、歴史と信仰、そして赤穂事件にまつわる数々の物語を秘めた、魅力あふれる寺院です。

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