東三省総督

東三省総督とは

東三省総督（とうさんしょうそうとく、満洲語：ᡩ᠋ᡝ᠋ᡵᡤᡳᡳᠯᠠᠩᡤᠣᠯᠣᡳᡠᡥᡝᡵᡳᡴᠠᡩ᠋ᠠᠯᠠᡵᠠᠠᠮᠪᠠᠨ）は、清朝末期に設置された地方長官の官職です。現在の中国東北部に位置する東三省（奉天省・吉林省・黒竜江省）を管轄し、その地域の軍政と民政の両方を統括する重要な役割を担いました。

清朝初期には、満洲族の故地である東三省には総督は置かれず、奉天府という独自の行政制度が用いられていました。しかし、1907年（光緒33年）の東北改制を機に、他の省と同様に東三省総督が設置されることになったのです。

総督は地方長官として最高位に位置しますが、東三省総督は特に重要なポストとされていました。なぜなら、満洲族の故地である満洲を管轄するだけでなく、当時満洲への進出を企図していた日本とロシアという二つの大国と相対する必要があったからです。そのため、東三省総督は、総督の筆頭格である直隷総督と同様に、非常に重要な役割を担っていたのです。

東三省総督の沿革

東三省総督の前身は、1622年（康熙元年）に設置された奉天将軍です。その後、1747年（乾隆12年）に奉天将軍は盛京将軍と改称されました。

1876年（光緒2年)になると、盛京将軍に総督の官位が与えられ、兵部尚書と都察院右都御史の肩書きが加えられました。さらに、奉天府尹と奉天府の兵部・刑部の尚書を兼任することになり、実質的に奉天府の長官としての役割も担うことになったのです。

そして、1907年（光緒33年）の東北改制によって、それまで奉天府の三将軍が管轄していた区域がそれぞれ「省」に改められました。これに伴い、盛京将軍を改めて東三省総督が置かれ、欽差大臣の肩書きが与えられました。従来三省を統括していた将軍職は巡撫と改められ、奉天・吉林・黒竜江にそれぞれ巡撫が置かれました。東三省総督の兵は、三省それぞれに駐屯することになりました。

1910年（宣統2年）には、東三省総督が奉天巡撫を兼任するようになりました。

歴代の総督

歴代の東三省総督は以下の通りです。

徐世昌（1907年6月12日-1909年2月8日）
錫良（1909年2月8日-1911年4月20日）
趙爾巽（1911年4月20日-1912年2月12日）

参考文献

徐世昌編「東三省善後時宜」光緒32年（1906年）に上奏したもの。『退耕堂政書』所収
徐世昌編『東三省政略』宣統3年（1911年）
臨時台湾旧慣調査会編『清国行政法』大正3年（1914年）3月

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