趙爾巽

趙爾巽（ちょう じそん、1844年5月23日 - 1927年9月3日）は、清朝末期から中華民国初期にかけて活躍した政治家です。字は次珊、号は無補と称しました。奉天府鉄嶺県出身で、漢軍正藍旗に属していました。

官僚としての経歴

趙爾巽は、科挙に合格して官僚としての道を歩み始めました。翰林院に進んだ後、各地の按察使や布政使を歴任し、地方行政においてその手腕を発揮しました。

山西巡撫：1902年、山西巡撫に任命され、地方行政を担いました。
湖南巡撫：1903年には湖南巡撫に転任し、引き続き地方行政に携わりました。
戸部尚書：1904年、中央に召還され、戸部尚書（現在の財務大臣）に就任しました。
盛京将軍：1905年、盛京将軍として赴任し、東三省の治安維持と行政に尽力しました。
四川総督：1907年には四川総督にも就任しましたが、後に弟の趙爾豊に代理を任せました。
湖広総督：同年、湖広総督に任命され、湖北法政学堂（後の湖北省立法科大学）を設立しました。
四川総督（再任）：1908年、再び四川総督に復帰しました。
東三省総督：1911年、東三省総督に就任し、欽差大臣を兼任しました。

辛亥革命とその後

1911年に辛亥革命が勃発すると、趙爾巽は東三省で治安維持に尽力しました。「奉天保安公会」を設立して地方官や民間有力者を動員し、治安維持に当たりました。また、張作霖の部隊を動員して革命派を弾圧し、東三省の安定を維持しました。しかし、この弾圧は南京臨時政府との関係悪化を招き、北伐軍が組織されるきっかけとなりました。

1912年、南北和議が成立すると、趙爾巽は民国政府から奉天都督に任命され、引き続き東三省の行政を担いました。その後、青島に隠棲しましたが、1914年には袁世凱によって清史館の館長に任命され、『清史稿』の編纂を主導しました。

『清史稿』編纂と晩年

趙爾巽は、清朝の歴史を記録する『清史稿』の編纂に尽力しました。しかし、動乱の時代であり、十分な校正時間がなかったため、『清史稿』には多くの誤りが含まれていると指摘されています。

1925年、段祺瑞の北京臨時政府が成立すると、その会議議長に推され、参政院院長にも指名されました。1927年、『清史稿』の脱稿直後に京都（現在の北京）で亡くなりました。

趙爾巽の功績

趙爾巽は、盛京将軍時代に義和団の乱やロシアの東三省占領、日露戦争による混乱の中で、治安維持や財政安定に成功しました。馬賊の帰順を促し、漢族流民の農地確保を進め、領域内の財政を黒字化しました。また、辛亥革命時には張作霖を活用して革命派を弾圧し、東三省の安定を保ちました。張作霖は生涯にわたり趙爾巽を師と仰ぎ、娘を趙爾巽の子に嫁がせるなど、深い敬意を示しました。

著作

趙爾巽は、政治家としてだけでなく、学者としても活動し、『刑案新編』や『趙留守攻略』などの著作を残しました。

趙爾巽は、清朝末期から民国初期にかけての激動の時代を生き抜いた政治家であり、その実務能力と行政手腕は高く評価されています。また、歴史編纂事業にも貢献し、後世に大きな影響を与えました。

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