東亜協同体論

東亜協同体論について

概要

東亜協同体論（とうあきょうどうたいろん）とは、1930年代後半の日本で生まれた政治理論で、東アジアにおける民族や国家の壁を越えた新しい協同体の構築を目指す考え方です。この思想は、当時の近衛文麿首相の周辺に集まった昭和研究会によってまとめられました。

近衛首相のブレインとなったメンバーには、三木清や蠟山政道などの著名な知識人が名を連ね、彼らの理論によって東アジアの未来について議論が行われました。

時代背景

日中戦争が始まった1937年から翌年には、戦局が厳しいものになり、早期の戦争終了が難しくなりました。そのため、政府は当初の政策を見直す必要に迫られました。1938年1月の第1次近衛声明に続き、同年11月には第2次近衛声明が発表され、戦争の目的が「国民政府の抹殺」から「東亜新秩序の構築」に変更されました。この頃、蠟山政道の「東亜協同体の理論」が発表され、東亜協同体についての議論が盛んになりました。

主な議論と特長

東亜協同体論は、抗日ナショナリズムや民族の統一に対する運動が活発になる中で成立しました。特に反帝国主義や資本主義の是正を求める姿勢が見られ、当時の日本を西洋の国々から独立した存在として捉える考えが強調されました。

論者たちは以下の原則を共通して主張しました：
1. 排他的ナショナリズムの超克
2. アジアの解放
3. ナチズムやファシズムとの相違
4. 日本のアジアにおける指導的役割
5. 日本国内の改革の必要性

このように、東亜協同体論は、アジア諸国と協力し合うことの重要性を説きました。国内の変革やアジア諸国との関係構築が重要視され、協同体の輪を広げることが求められたのです。

しかし、この思想は実際には、中国の国民政府からは拒否され、近衛グループの運動は次第に大政翼賛会へと移行し、東亜協同体論自体も異なる概念へと変化していきました。

戦後の影響

第二次世界大戦後、東亜協同体の理念は日本の対アジア外交の一部において受け継がれたという見解も存在します。例えば、日本がアジア諸国との外交関係を築き、地域のナショナリズムや共産主義勢力を包摂しようとする試みは、これらの思想の延長線上にあるとされています。

歴史的評価

このように、東亜協同体論は国際政治理論の一つとしての重要性を持っており、大恐慌後の国際秩序の変動とともに、新たな地域主義の潮流として位置づけることができます。アジア主義が初めて政策化された試みであり、国際関係の中でも特異な意義を持っています。国際環境の変動の中で、東亜協同体論が目指した理念がどのように評価されていくのか、今後も研究が進められることでしょう。

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