東京バイパス指令

東京バイパス指令：1960年代後半を彩った社会派アクションドラマ

1968年11月8日から1970年1月30日にかけて、日本テレビ系列で毎週金曜夜に放送された『東京バイパス指令』。全65話という長きに渡り、トヨタグループの単独提供番組として多くの視聴者を魅了した人気アクションドラマです。この番組枠は、以前は『グランプリ劇場』や『サスペンス劇場』として知られていましたが、本作の放送開始と同時に『トヨタサスペンス劇場』と名称変更されました。後に『トヨタ金曜劇場』そして『金曜劇場』へと枠名は変遷していきます。

世田谷のスナックを拠点に、悪と闘う特命刑事たち

本作は、特命刑事として抜擢された刑事たちが、数々の難事件や凶悪事件に立ち向かう物語です。彼らは表向きは、東京・世田谷通り沿いに事務所を構える「東京マスコミ研究所」のルポライターとして活動。事件発生時には、警察手帳や拳銃を持たない特命刑事として、隠密裏に捜査を開始します。

主演を務めたのは、『青春とはなんだ』で一世を風靡した夏木陽介と、『これが青春だ』『でっかい青春』などの作品で知られる竜雷太。東宝青春シリーズを代表する2人の共演は、当時大きな話題となりました。

社会問題を反映したリアリティ溢れるストーリー

『東京バイパス指令』の魅力の一つは、社会問題を巧みにストーリーに織り込んだ点にあります。例えば、第19話「基地の狼」では横田基地が登場し、第24話「地獄部屋」では当時の沖縄問題、第36話「地獄特急」では横須賀線電車爆破事件、そして第37話「ライフル魔」では金嬉老事件をモチーフにしたエピソードが放送されました。これらの社会派な展開は、当時の視聴者に大きな衝撃を与え、高い評価を得る要因となりました。

さらに興味深いのは、ドラマの舞台となったスナック「POLLO（ポロ）」が、実在した店であったという点です。主演の夏木陽介さんが私財を投じて開店した店で、ドラマ放送後もしばらく営業を続けていたそうです。この事実が、ドラマにリアリティと深みを与えています。

好調な視聴率と番組改編

当初は2クール（26話）の放送予定でしたが、予想を上回る高い視聴率を獲得したことから、放送期間が延長されました。放送期間の延長に伴い、レギュラー出演者の入れ替えや、基本設定の変更も実施。第52話で「東京マスコミ研究所」が閉鎖されるなど、物語に新たな展開が加わっていきました。

制作に携わった岡田晋吉氏は、本作について「ストーリー作り、撮影スケジュールの面で行き詰まった」と回顧しています。一方、夏木陽介氏は、撮影で本物のライフル銃を使った経験について、実弾を発射した後の反動や、ロケ先での弾薬調達に手間取ったことなどを語り、撮影における安全性の重要性を痛感したエピソードを残しています。

キャストとスタッフ

主要キャストには、夏木陽介さん演じる南郷健介警部、竜雷太さん演じる槙竜次警部補をはじめ、成川哲夫さん、永井譲滋さん、柴田侊彦さん、宮口精二さん、藤木悠さん、白川由美さん、柏木由紀子さん、西田佐知子さん、清水将夫さんなどが名を連ねています。ナレーターには、中江真司さんと納谷悟朗さんが起用されました。

スタッフには、東宝株式会社、国際放映、日本テレビといった名だたる制作会社が参加。プロデューサーには市川久夫氏、吉田精弥氏、神谷一夫氏、銀谷精一氏、岡田晋吉氏らが名を連ねています。

放送局とその後

『東京バイパス指令』は、日本テレビをキー局に、全国各地の系列局で放送されました。放送エリアは北海道から九州、沖縄まで広く、多くの視聴者に視聴機会を提供しました。その人気は後番組である『ゴールドアイ』にも引き継がれ、日本のテレビドラマ史に大きな足跡を残しました。

まとめ

『東京バイパス指令』は、社会派なストーリー、豪華なキャスト、そしてリアルな舞台設定が三位一体となった、1960年代後半を代表するアクションドラマです。高視聴率を獲得した背景には、時代を反映したテーマと、緻密に練られた脚本、そして俳優たちの熱演があったと言えるでしょう。現在でも多くのファンに愛され続ける本作は、日本の刑事ドラマ史において重要な位置を占める作品と言えるのではないでしょうか。

もう一度検索