東京大渇水

東京大渇水

東京大渇水（とうきょうだいかっすい）とは、1960年代初頭に東京で発生した重大な水不足を指します。その中でも特に1964年の渇水は深刻で、「オリンピック渇水」や「東京砂漠」とも呼ばれる事態となりました。この大渇水の原因と経過、そして影響について詳しくみていきます。

背景

東京が位置する首都圏は、もともと水利用において恵まれた土地ではありませんでした。1960年代を迎えるまで、東京の上水道は主に小河内ダムを含む多摩川水系の水に頼っていました。しかし、多摩川水系は集水域が狭い上、水量が少なく安定性にも欠けており、もう一つの水源である荒川水系も水量が変動しやすいため、管理が難しい状態でした。

特に、戦後の東京は急速な人口増加や水道の普及、高度経済成長にともなう工業用水の需要増など、様々な要因によって水の需要が著しく増加しました。これにより、1958年以降、東京は毎年のように渇水に直面する事態となりました。実際に、多摩川水系の淀橋浄水場は供給の限界に達し、1960年から1962年にかけては異常気象により降雨量が平年の半分以下となりました。その結果、東京の水不足は深刻化し、1961年には20%の制限給水が導入され、1962年には35%まで強化されました。これにより、住民や製造業に大きな影響が出ました。

水不足対策と経過

1960年、東京都は江戸川からの取水を拡張し水不足に対処したものの、根本的な解決には至っていませんでした。そこで政府は1960年春に水資源対策特別委員会を設置し、1962年には水資源開発公団を設立しました。この公団は利根川を新たな主要水源として利用するための大規模な水資源開発に着手しましたが、利根川上流ダム群は1967年以降に完成する見込みでした。

1964年、東京オリンピックを控えた年、渇水は特に厳しい状況に達しました。5月から降雨が減少し、夏には小河内ダムの水位が満水時のわずか1.6%にまで落ち込みました。この事態を受けて東京都は非常事態宣言を出し、さらなる対策を講じる必要がありました。

7月には、東京都は水不足緊急対策会議を開き利根川からの取水を急ぐことを決定しました。五輪担当大臣の河野一郎はオリンピックに向けた水の確保を命じ、秋ヶ瀬取水堰の工事を前倒しするよう指示しました。その後、東京都は自衛隊員を派遣し、手動での給水を開始しました。7月の末には制限給水の割合が45%に達し、待機中の人々が水を求める混乱が広がりました。

渇水の影響

特に8月には、各区での水の制限が強化され、理髪店やクリーニング店が閉鎖され、医療機関の活動も大きく制限されました。都民は、生活必需品である水を確保するために奮闘を強いられ、入浴や洗濯、炊事さえままならない状態が続きました。こうした状況から、メディアでは「東京砂漠」という言葉が頻繁に使われるようになりました。

8月からは人工降雨実験が行われ、次第に状況が改善されました。8月20日には待望の大雨が降り、さらに秋ヶ瀬取水堰が完成し、一時的に水源の供給が改善されました。結果として、東京都は1259日（約3年半）にわたり制限給水を続けることになりました。

結果とその後

1965年3月には武蔵水路がほぼ完成し、その後も利根川水系のダムが立て続けに完成しました。こうした取り組みにより、東京の水供給は大きく改善され、以降の渇水リスクは大幅に減少することとなります。この1964年の大渇水は、東京の水資源管理の重要性を再認識させる出来事として、今もなお語り継がれています。

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