東京川崎財閥

東京川崎財閥について

東京川崎財閥は、1872年に川崎八右衛門によって設立された関東の主要な財閥です。一般には「川崎財閥」とも呼ばれますが、神戸を拠点とする川崎重工業のグループとは異なります。この財閥は、川崎八右衛門の名前から「川崎八右衛門財閥」と呼ばれることもあれば、金融に特化した性格から「川崎金融財閥」という名称で知られることもあります。

創業と発展

川崎八右衛門は、水戸藩の勘定方としての経験を活かし、東京に進出。1872年に川崎組を設立しました。川崎組は、その後1893年に合資会社川崎銀行へと成長し、1919年には株式会社川崎銀行に変革しました。また、1876年には安田善次郎と共に、第三国立銀行（現在の第一生命銀行）を設立するなど、金融業界での影響力を拡大していきます。

東京川崎財閥は、川崎銀行を中心に金融財閥として多面的に発展しました。川崎家の背景である水戸藩により、常陽銀行や足利銀行、千葉合同銀行（現在の千葉銀行）、明和銀行、鎌倉銀行など、多くの銀行の経営にも関与していました。これらの銀行は東京川崎財閥の傘下企業と化して厚い信頼を寄せられます。

保険と信託業務への進出

1910年には日本火災保険を設立し、保険部門へ進出。1914年には日華生命保険を設立、その後1941年に両社は合併し、第百生命保険（現在のマニュライフ生命保険）となります。さらに1927年には川崎信託を設立し、信託業務へも進出しました。東京川崎財閥は、金融業にとどまらず、貿易や鉱業などさまざまな分野へ事業を広げました。

経済危機と再編

しかし、昭和金融恐慌の影響で川崎銀行は経営が悪化します。そんな中、井上準之助蔵相の仲介を経て第百銀行と合併し、川崎第百銀行となりました。1936年には傘下の川崎貯蓄銀行と東京貯蔵銀行を吸収し、第百銀行と改称しますが、その後、1943年10月には三菱銀行（現在の三菱UFJ銀行）に吸収されてしまいます。

戦後の再生

戦後の財閥解体で川崎財閥の本社は解散となりましたが、新たに資産管理会社「川崎定徳」が設立されました。この会社は、財閥が所有していた多くの不動産の管理を担うことになりました。1953年には、3代目当主・川崎守之助に信任された佐藤茂が入社し、総務部長として業務を円滑に進めました。

佐藤は、暴力団による不法占拠を一掃し、守之助から絶大な信頼を得ることに成功しました。彼は1973年に川崎定徳の終身社長に就任し、その後も多くの事件や合併などに関与し、川崎定徳を拡大していきました。

重要な建物と会社

川崎銀行本店は、1927年に矢部又吉によって設計されたルネッサンス様式の建物であり、1986年には博物館明治村に移築されています。1989年に建てられたスターツ日本橋ビルには、旧本店の意匠が引き継がれています。

結論

東京川崎財閥は、その設立から金融業界における影響力を持ちつづけ、戦後は新たな形での再構築を果たしました。財閥の変遷を通じて、その存在は多くの企業や産業に影響を与え、現在もその流れを汲んだ企業が国内外で活躍しています。

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