東光院の歴史と概要
東光院は、
岐阜県恵那市岩村町富田に位置する
臨済宗妙心寺派の寺院です。天徳山を山号とし、
恵那三十三観音霊場の第十番札所として、地域の人々に親しまれています。本尊は十一面観世音菩薩で、特に「火水観音」として知られ、火難除けや雨乞いの霊験があるとされています。
創建は、
大永年間(1521年~1528年)に大源孚公が、大圓寺の
塔頭として打杭峠の傍に庵を建立したことに始まります。その後、
元亀3年(
1572年)には、武田信玄の命による武田勢の攻撃で大圓寺が焼失する中、東光院は難を逃れました。この縁により、大圓寺で祀られていた十一面観世音菩薩が東光院の本尊となり、また、武田勢に斬殺された大圓寺住持、
希菴玄密の位牌も祀られるようになりました。
江戸時代に入り、元和年間には
加茂郡の瑞林寺七世、竺源玄盛が、大圓寺の再興を志して岩村を訪れました。しかし、当時の
岩村藩主であった
松平乗寿が、
岩村遠山氏の菩提寺であった大圓寺の再興を拒んだため、竺源玄盛の法嗣が代わりに東光院を中興し、末寺としたと伝えられています。その後、
文政2年(
1819年)に火災で焼失しましたが、
天保14年(
1842年)に再建され、現在に至っています。
本尊「火水観音」と寺宝
東光院の本尊である十一面観世音菩薩は、「火水観音」と呼ばれ、普段は秘仏として厨子の中に安置されています。その名の通り、火難を防ぐ力を持つとされ、また、開扉すると雨を呼ぶという言い伝えがあります。寺伝によると、過去には明治時代に一度、そして
昭和15年(
1940年)の旱魃の際に開扉したところ、直後に大雨が降ったとされています。この霊験は、地域の人々から深く信仰されています。
また、東光院が所蔵する弘法大師像は、明治初期の神仏分離令により廃寺となった
真言宗当山派の寺院から移されたものと考えられています。この像もまた、東光院の歴史を物語る貴重な寺宝の一つです。
境内とゆかりの人物
東光院の境内には、明治時代に陸軍中将、陸軍大臣、貴族院議員を歴任した
大島健一と、第二次世界大戦時に
ドイツ大使を務めた
大島浩の墓があります。二人は親子であり、日本の近代史における重要な人物です。彼らの墓が東光院にあることは、この寺院が地域社会と深く関わってきた証と言えるでしょう。
大成裏経塚
東光院の関連として、
恵那市岩村町富田と飯羽間の境には、
五輪塔がある「大成裏経塚」があります。これは、
昭和37年(
1962年)に廃校となった
岩村町立大成小学校の跡地の裏手に位置することから、その名で呼ばれています。この
五輪塔は、
寛永6年(
1629年)に東光院の住持であった祖牛和尚によって建てられたもので、最も小さいもので高さ4尺3寸です。塔の礎石には
法華経を賛美する文章が刻まれており、当時の信仰の様子を今に伝えています。
関連寺院
東光院は、過去に深い関わりがあった瑞林寺と関係があります。瑞林寺は、東光院の中興に関わった竺源玄盛が所属していた寺院であり、東光院の歴史を語る上で欠かせない存在です。
まとめ
東光院は、その長い歴史の中で多くの変遷を経て、現在に至る寺院です。本尊の火水観音をはじめとする多くの文化財や、歴史上の人物の墓所を有し、地域の人々の信仰を集めています。また、大成裏経塚や関連寺院との繋がりは、この寺院の歴史と地域の文化を深く理解する上で重要な要素です。
参考文献
『岩村町史』 十八 江戸時代の宗教 3 寺院 東光院 p320 岩村町史刊行委員会 岐阜県岩村町役場 1961年
『恵那郡史』 第八篇 現代 第四十一章 人文の発展(一) 【各宗寺院】 p612~p619 恵那郡教育会 1926年
* 『女城主の里 いわむら』
岩村町企画商工観光課 p67 平成5年