東北大学学術資源研究公開センター植物園

東北大学植物園：都市に息づく自然の宝庫

東北大学植物園は、宮城県仙台市青葉区青葉山に広がる、東北大学が運営する自然植物園です。 大学の学術資源研究公開センターに属し、仙台市中心部の西側に位置する青葉山丘陵の東端に立地しています。約59万㎡という広大な敷地は、国の天然記念物「青葉山」と国の史跡「仙台城跡」の一部を含み、その大部分が法令により保護された貴重な自然林となっています。青森県青森市には、八甲田山分園も存在します。

青葉山本園：歴史と自然が織りなす空間

本園は、東北大学川内キャンパスと青葉山キャンパス、そして仙台城跡に隣接。南側は竜ノ口渓谷に面し、豊かな自然環境に恵まれています。園内には、本館（研究棟）、記念館（津田記念館）、ヤナギ館（標本庫）といった研究施設に加え、ロックガーデン、湿生植物園、そして天然記念物指定区域を巡る観察路が整備されています。

本館には、植物構造機能進化学研究室をはじめとする研究室が置かれ、活発な研究活動が行われています。一般公開されている展示ホールでは、「青葉山」の生態系に関する展示を見学できます。一方、記念館とヤナギ館は、貴重な植物標本を収蔵するハーバリウムとして活用されており、一般公開はされていません。特に津田記念館は、日本最大規模の大学ハーバリウムの一つとして知られています。

観察路は、渓流沿いの道や台地上の道、尾根伝いの道など、変化に富んだルートで構成されています。途中にはベンチや東屋が設置され、散策しやすい環境が整備されています。「モミノキ道」や「カタクリ道」といった愛称もつけられていますが、公式な案内では使用されていません。また、園内には標高差があり、尾根伝いの道は比較的急勾配ですが、眺望の良い広場も設けられています。

豊かな生態系：中間温帯林の奇跡

青葉山植物園の敷地は、江戸時代から厳しく保護されてきた歴史を持ちます。仙台城の築城以来、防衛と水源涵養のために一般人の立ち入りが制限されており、その結果、都市部に残された貴重な中間温帯林がほぼ極相の状態を保っています。この中間温帯林は、モミを優占種とする森林で、冷温帯性と暖温帯性の植物が混生する、生物多様性に富んだ生態系を特徴としています。

園内には、700種近い高等植物が生息し、ラン科の腐生植物やカヤランなどの着生植物も豊富です。ニホンカモシカなどの大型哺乳類をはじめ、多様な動物が生息しており、複雑な食物網が構築されています。このような、大都市近郊における希少な生態系の存在が、青葉山の天然記念物指定の理由となっています。

植物園としての活動：研究と保全の拠点

東北大学植物園は、学術研究と公開の両面で重要な役割を果たしています。ヤナギ科植物の系統保存においては、世界有数の規模のコレクションを誇り、種子交換事業を通じて、世界各地の研究機関と連携しています。「モニタリングサイト1000」事業にも参加し、長期的な環境モニタリングにも貢献しています。さらに、一般市民向けの公開講座や企画展も開催されています。

八甲田山分園：亜高山帯の自然

青森県八甲田山にある分園は、標高約900mの亜高山帯に位置し、ダケカンバやオオシラビソを中心とした自然植生が広がっています。高層湿原「極楽沼」も存在し、独特の植物相を観察できます。実験棟や研究者宿泊棟、観察路が整備され、研究活動の拠点となっています。

アクセスと開園情報

本園は、仙台市営バスや地下鉄を利用してアクセスできます。開園期間は春分の日から11月30日、開園時間は9時から17時までです（入園受付は16時まで）。入園料は大人220円、小人110円ですが、みどりの日や文化の日、東北大学の学生・教職員は無料です。また、駐車場も本園には完備されています。八甲田山分園の開園期間は6月1日から10月31日、入園料は無料です。

まとめ

東北大学植物園は、学術研究と自然保全、そして一般公開という三つの柱をバランス良く融合させた、貴重な施設です。都市の中にありながら、豊かな自然に触れ、その重要性を学ぶことができる、魅力的な場所となっています。

もう一度検索