東岳大帝

東岳大帝（泰山府君）とは

東岳大帝（とうがくたいてい）は、道教における重要な神の一柱です。五岳の一つ、東岳泰山の神として知られ、泰山府君（たいざんふくん）とも呼ばれます。泰山は古来より死者の霊が集まる場所とされ、その神は冥界を司る最高神として、人々の寿命や現世での地位を支配すると信じられてきました。

泰山府君の神格

泰山府君は、人々の運勢が詳細に記された「禄命簿」を持つとされ、一般には玉皇上帝の孫であると伝えられています。漢代以降、歴代の皇帝が泰山で封禅の儀式を執り行うようになり、泰山の神は天帝に匹敵する権威を持つようになりました。この頃から、泰山府君の名に代わり、東岳大帝という名称が広く用いられるようになります。

東岳大帝は、天帝直結の天尊として、城隍神や土地神を統率し、侍従を従えて人間界を巡幸し、人々の善悪を視察して不正を正す神として、中国各地で広く祀られるようになりました。

日本における泰山府君

日本では、泰山府君の名で知られ、陰陽道の主祭神として重要な役割を果たしています。安倍晴明が用いたとされる陰陽道の最高奥義「泰山府君の祭」は、『今昔物語集』にも記述があり、重病の高僧の命を救った逸話が残されています。この祭は、天皇の長寿を祈るなど、朝廷における重要な国家祭祀としても行われていました。

福井県大飯郡おおい町には、泰山府君社跡という祭壇が、天社土御門神道本庁に存在しています。

仏教における泰山府君

仏教では、泰山府君は太山府君（たいざんふくん）と呼ばれ、十二天の一尊である焔摩天の眷属とされています。胎蔵界曼荼羅においては、焔摩天の真下に配置され、一面二臂の姿で、左手に人面幢を持ち、その前で跪く者の生前の罪状を聴き、右手の筆で書物に書き記す姿で描かれています。また、十王信仰に取り入れられ、十王の一人、泰山王（太山王）としても知られています。

派生作品

能の演目には、世阿弥作の「泰山府君」があります。この曲は、桜が爛漫と咲き誇る季節を舞台に、万物の生命を司るとされる泰山府君に、桜の命を永らえさせてほしいと願う内容が歌われています。

関連項目

閻魔
赤山禅院

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