東常慶

東常慶（とう つねよし）

東常慶は、生年不詳ながらも戦国時代に活躍した武将で、郡上東氏の第11代当主を務めました。美濃国郡上郡の篠脇城を本拠地とし、その生涯は戦乱と策謀に彩られています。

生涯

東常慶は、東常和の子として生まれ、東常縁の孫にあたります。彼の時代、郡上東氏は周辺の勢力との間で緊張関係にありました。特に、外戚である遠藤氏の一族、和田五郎左衛門との対立は、常慶の生涯に大きな影響を与えました。

和田氏との対立

和田五郎左衛門が小多良郷和田会津に拠り、勢力を拡大し始めたとき、常慶はこれを危険視しました。天文9年（1540年）、常慶は木腰城主の遠藤胤縁とその弟盛数と共謀し、五郎左衛門を篠脇城の修理を名目に呼び出し、暗殺しました。さらに、和田一族が報復の準備をする間もなく、常慶は彼らを急襲し、滅ぼしました。この結果、小多良の地は遠藤善兵衛に与えられました。

朝倉氏との戦い

同じく天文9年（1540年）、越前の朝倉孝景の軍勢が郡上に侵攻しました。石徹白村の常慶の娘婿、石徹白源三郎が朝倉勢の案内を余儀なくされる中、常慶は遠藤胤縁・盛数兄弟の進言を受け、決戦を覚悟しました。篠脇城の防御を固め、9月3日に攻撃してきた朝倉軍を放射状竪堀から巨石を落として撃退しました。しかし、この戦いで城も大きな損害を受けました。

翌年、篠脇城の修復が困難な状況下で、再び朝倉勢が迫ると、常慶は大島の安養寺に救援を求めました。安養寺は信徒1,000人を集め、美濃・越前国境の油坂峠に布陣し、朝倉勢の侵攻を阻止しました。

東殿山城の築城

篠脇城の修復を諦めた常慶は、郡上の防衛に適した新たな城を築くことを決意しました。天文10年（1541年）、赤谷山に東殿山城を築き、子の常堯に守備を任せました。

鷲見氏の討伐

同じく天文10年（1541年）、阿千葉城主の鷲見貞保が常慶の命令に背いたため、討伐軍を起こし、貞保を自害させ、郡上北部で勢力を持っていた鷲見氏を滅ぼしました。

河合氏との戦い

天文21年（1552年）、東氏一族で福野城に拠り、下川筋で勢力を拡大していた河合七郎一族を警戒した常慶は、遠藤盛数に討伐を命じました。盛数は七郎を討ち、下川筋の領地を得て鶴雄山城を築きました。

家督と最期

実子の常堯が悪逆非道であったため、常慶は遠藤盛数を婿養子に迎え、弘治年間（1555年 - 1558年）に家督を譲ったとも言われています。一方、常堯と遠藤胤縁の娘との縁組を試みましたが、胤縁は常堯の行状を理由にこれを拒否しました。このことが、後の悲劇につながります。

常堯は、永禄2年（1559年）に胤縁を鉄砲で暗殺しました。これに対し、盛数は兄の弔い合戦を大義名分に郡内の諸豪を募り、常慶と常堯を討つべく挙兵しました。激しい攻防の末、東殿山城は落城し、常慶は戦死したとされています。しかし、異説として、娘婿の盛数に助けられ北辰寺に逃れ、永禄4年（1561年）に同寺で死去したとも伝えられます。

その後

子の常堯はその後も抵抗を続けましたが、天正13年（1586年）の天正大地震で飛騨の帰雲城が崩壊し、その下敷きとなり死亡しました。

東常慶の生涯は、戦国時代の武将としての勇猛さと、一族の内紛による悲劇的な結末の両面を描いています。彼の時代は、郡上東氏にとって激動の時代であり、その後の歴史に大きな影響を与えました。

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