東常縁

東常縁（とう つねより）について

東常縁は、室町時代中期から戦国時代初期にかけての武将であり、歌人としても名を残しました。郡上東氏の第9代当主であり、美濃の篠脇城を拠点としていました。官職が下野守であったことから、一般には東野州（とうやしゅう）の名で知られています。

生涯

常縁は、武将で歌人でもあった東益之の五男として生まれました。正確な生年は不明ですが、明応3年（1494年）に94歳であったとする記録から応永8年（1401年）生まれとする説や、寛正6年（1465年）に59歳であったとする記録から応永14年（1407年）生まれとする説があります。当初は父益之と親交のあった冷泉派の歌人、正徹に歌を学びましたが、東家が代々二条派に属していたこともあり、宝徳2年（1450年）に二条派の尭孝に師事しました。

康正元年（1455年）には、関東で享徳の乱が発生し、これに伴い下総で起きた千葉氏の内紛を鎮めるため、8代将軍足利義政の命により、千葉実胤・自胤兄弟を支援して馬加康胤・原胤房と戦いました。しかし、古河公方足利成氏が常縁に敵対的な介入を行ったため、戦況は好転せず、同行していた酒井定隆も成氏に寝返るという状況でした。応仁元年（1467年）に始まった応仁の乱の際も、常縁は関東にいたと考えられています。

郡上の篠脇城には兄の氏数がいましたが、応仁2年（1468年）に美濃守護代の斎藤妙椿に攻められ、城は落城し、東家に伝わる多くの和漢書が失われました。しかし、妙椿と常縁は和歌を通じて親交があり、文明元年（1469年）には、浜春利の仲介で常縁が妙椿に十首の歌を贈っています。その結果、妙椿は篠脇城を返還し、常縁は郡上に戻ることができました。その後、失われずに残っていた東家伝来の『古今集』に奥書を加えました。文明3年（1471年）には、宗祇に『古今集』の講釈（古今伝授）を行い、同年、大坪基清の求めに応じて同様の講釈を行いました。文明14年（1482年）には、藤原定家の家集『拾遺愚草』から58首を選び、注釈を加えて宗祇に与えています。常縁の晩年については、資料が乏しく不明な点が多いです。

人物

常縁は、武将としての活動だけでなく、歌人としても卓越した才能を発揮しました。その家集『常縁集』や、歌学書『東野州聞書』は、当時の歌壇における彼の地位を示すものです。また、彼は『徒然草』の重要な古写本である、常縁自筆とされる写本を残しています。この写本は、後世の文学研究においても貴重な資料となっています。

関連書籍

井上宗雄,島津忠夫編『東常縁』和泉書院 1994
東常縁原著 細川幽斎補『新古今集聞書 幽斎本 本文と校異』荒木尚編著 九州大学出版会 1986

関連項目

集外三十六歌仙
徒然草

脚注

参考文献

* 島津忠夫 著「東常縁の生涯と文事」、井上宗雄・島津忠夫 編『東常縁』和泉書院、1994年、11-24頁。ISBN 4-87088-696-0。

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