帰雲城

帰雲城（かえりくもじょう）とは

岐阜県大野郡白川村、三方崩山の麓に位置した帰雲城は、戦国時代にこの地を治めた内ヶ島氏の居城でした。1462年頃、内ヶ島為氏によって築城されたと伝えられています。しかし、1586年（天正13年）に発生した天正地震によって山が崩壊し、城と城下町は土砂に埋もれてしまいました。この災害で、城内で行われていた祝宴に参加していた人々を含め、多くの命が失われ、内ヶ島氏は滅亡しました。

悲劇的な最期

天正13年11月29日（1586年1月18日）の天正地震は、帰雲城とその周辺地域に甚大な被害をもたらしました。帰雲山の崩壊により、300戸以上の家屋が土砂に埋まり、500人以上が命を落としたとされています。城内では祝宴が催されていたため、難を逃れたのはわずか4人だったと伝えられています。城主の内ヶ島氏理を含む一族は全員が死亡し、この出来事をもって内ヶ島氏は歴史から姿を消しました。

幻の城

帰雲城の正確な位置は、現在も特定されていません。城跡とされる場所には碑が建てられていますが、その下に城が埋まっているという確証はありません。しかし、その場所一帯で過去に土砂崩れがあったことは地質調査で確認されています。これまで幾度となく、埋没した城の位置を特定しようとする試みが行われてきました。1972年には「白川帰雲城・発掘保存準備委員会」が発足し、近隣の鉱山の技術支援も検討されましたが、発見には至りませんでした。1993年には「白川郷埋没帰雲城調査会」が設立され、江戸時代の地誌や古地図をもとに、帰雲川左岸のいずれかに城があったと推定しています。2027年には試験的な発掘調査が予定されており、その結果が注目されています。

城下町の痕跡

現在、帰雲城跡とされている場所の近くには保木脇集落がありますが、これは帰雲城の城下町の名残ではなく、昭和30年代にダム建設に伴う移転先として形成されたものです。しかし、この集落には、ある建設会社の社長が見た夢に現れた帰雲城の武将を祀る観音像や神社が建てられ、地元住民も協力して公園化されています。

史料に残る記録

帰雲城の悲劇は、当時の記録にも残されています。本願寺門主顕如の側近であった宇野主水が記した「貝塚御座所日記」には、天正地震による各地の被害情報とともに、帰雲城に関する記述があります。また、『越中国名跡志』という史料にも同様の記述が見られます。

埋蔵金伝説

内ヶ島氏の領内には金山があったことから、帰雲城の崩壊とともに金が地中に埋まったという埋蔵金伝説も存在します。しかし、この伝説は古くから伝わっていたものではなく、1970年頃に内ヶ島氏の末裔を名乗る人物が広めた話が発端であると指摘されています。

メディアによる探求

テレビ愛知では、帰雲城の埋蔵金伝説を追うドキュメンタリー番組『消えた戦国の城』シリーズを放送しています。番組では、伝説の真相に迫りながら、埋もれた歴史を紐解こうと試みています。

関連情報

帰雲城に関する研究書や論文、創作作品も多数存在します。これらの情報を通じて、帰雲城の歴史や文化に触れることができます。

関連書籍

岐阜県編集発行『岐阜県史 通史編 中世』(1969年発行)
岐阜県編集発行『岐阜県史 通史編 近世 上』(1968年発行)
岐阜県編集発行『岐阜県史 史料編 古代・中世一』(1969年発行)
岐阜県編集発行『岐阜県史 史料編 古代・中世四』(1973年発行)
荘川村『荘川村史 上巻』(1975年発行)
森本一雄『定本 飛騨の城』郷土出版社、1987年9月15日。
白川村『新編 白川村史 上巻』(1998年発行)
『歴史の足跡をたどる日本遺構の旅』- 「なるほど知図bookまっぷる選書」 (昭文社2007年刊。ISBN 9784398143051)
加来耕三『消えた戦国武将 帰雲城と内ヶ嶋氏理』メディアファクトリー、2011年。ISBN 978-4-8401-4344-8。

関連論文

安達正雄「白山大地震により埋没した「帰雲城」と「木舟城」」『日本海域研究所報告』8号、1976年。
安達正雄「白山大地震により埋没した「帰雲城」と「木舟城」―第2報 両城主の家系図の検討―」『日本海学会誌』1号、1977年、doi:10.11501/2228246。
安達正雄「白山大地震により埋没した「帰雲城」と「木舟城」―第3報 内ヶ島系図と石黒氏系図の研究―」『日本海域研究所報告』9号、1977年。
安達正雄「白山大地震により埋没した「帰雲城」と「木舟城」―第4報 内ヶ島氏および石黒氏の家臣達―」『日本海学会誌』2号、1978年、doi:10.11501/2228247。
安達正雄「白山大地震により埋没した「帰雲城」と「木舟城」―第5報 両城主と一向一揆―」『日本海域研究所報告』10号、1978年。
安達正雄「白山大地震により埋没した「帰雲城」と「木舟城」―第6報 両城主をめぐる地震の被害、震度分布、余震等について―」『日本海学会誌』3号、1979年、doi:10.11501/2228248。
安達正雄「帰雲城主・内ヶ嶋氏の歴史と家系」『北陸都市史学会会報』8号、1986年。
安達正雄「飛騨帰雲城と城主・内ヶ嶋氏の史実を探る― 天正大地震の土石流で城と城下町が埋没し、放置されて四百二十年に当り―」『石川郷土史学会々誌』39号、2006年。
安達正雄「五箇山文献に秘められた飛騨・内ヶ嶋氏の史実について―五箇山と川上三箇庄の一部は室町末期､実は内ヶ嶋氏の領地だった?―」『石川郷土史学会々誌』40号、2007年。
安達正雄「木舟城を陥没させ帰雲城を埋没させた天正大地震の真相―天正大地震は連続多発地震だった―」『石川郷土史学会々誌』42号、2009年。
福井重治 著「飛騨の金銀山と山城」、小菅徹也 編『金銀山史の研究』高志書院、2000年。

関連創作作品

『変幻退魔夜行カルラ舞う! 』- 永久保貴一
『呪いの紙草履』 - 和久峻三による赤かぶ検事シリーズの1作。
『帰天城の謎 ～TRICK青春版～』 - はやみねかおるによるドラマ『TRICK』の外伝小説。帰雲城をモデルにした「帰天城」が登場。

関連リンク

埋没城伝説の館 - ウェイバックマシン（2019年1月1日アーカイブ分）
飛騨・帰雲城　大地震で陥落、今も埋没　朝日新聞
新・帰雲城と内ヶ嶋氏の謎
* 幻の帰雲城（白川村役場）


帰雲城は、その悲劇的な最期と、未だ解明されない謎が人々の心を捉え続けています。今後、発掘調査が進むことで、その姿が明らかになる日が来るかもしれません。

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