東方正教会文明

東方正教会文明とは

東方正教会文明（とうほうせいきょうかいぶんめい）または東方正教会世界は、サミュエル・P・ハンティントンによって提唱された文化圏の一つです。この文明圏は、主に正教会を信仰する国々が属しており、特にロシアが中心として重要な役割を果たしています。そのため、ロシア正教会文明とも呼ばれています。

正教会の構成

「ロシア正教会」という名称は、その組織名であり、正教会そのものや東方正教会全体を指す概念ではありません。ブルガリア、ギリシャ、ルーマニア、セルビアといった国々にも独自の正教会が存在し、それぞれが独立した組織として機能しつつ、正教会としての連帯感を保っています。これらの国々は主に東欧やバルカン半島に位置しており、東方正教会文明の重要な構成要素となっています。

歴史的背景

東方正教会文明は、東ローマ帝国（395年 - 1453年）の影響を強く受けています。この帝国は、様々な文化が交差する地域であり、古代ギリシャ、ヘレニズム、古代ローマ、キリスト教、ペルシャ、イスラムの影響を受けて独自の文明を築き上げていきました。1453年にオスマン帝国に滅ぼされるまで、東ローマ帝国は周辺地域に多大な影響を及ぼしました。

ロシアのキリスト教受容

ロシアでは、10世紀末にウラジーミル大公が東ローマ帝国からキリスト教を受け入れたことから、国民全体が正教会の信徒となりました。この際、スラヴ語を表記するためのキリル文字も導入され、正教の文化が深く根付くこととなりました。1236年、大規模なモンゴル軍の侵攻によってルーシの土地はモンゴルの支配下に置かれましたが、その後も正教会は英国民のアイデンティティに重要な役割を果たしました。

1453年には、モスクワ大公イヴァン3世が東ローマ帝国最後の皇帝の姪と結婚し、正教会の保護者としての地位を確立しようとしました。この時点でオスマン帝国と西欧の影響を受けながら、東方正教会文明は独自に発展していくことになります。

比較文明論とハンティントンの視点

サミュエル・P・ハンティントンは、文化圏としての東方正教会文明を提唱し、彼の著書『文明の衝突』の中で、冷戦後の世界における文化の衝突が起こるであろう8つの文明圏の一つとしてこの文明を位置づけました。具体的には、ロシア、ギリシャ、ウクライナ、ルーマニア、セルビア、グルジア、アルメニア、カザフスタン、ベラルーシ、モルドバといった国々がこの文明圏に含まれています。

文明の比較

東方正教会文明と東ローマ文明を一つにするか別々に扱うかについては、学者により意見が分かれています。一般的に、ギリシア文明とローマ文明の違いのようなものが見受けられ、同じカテゴリーに分類されることもあります。トインビーは、ロシアが東ローマ文明の後継国であると述べていますが、各文明の特徴や影響を考慮する必要があるでしょう。

結論

このように、東方正教会文明は歴史的、文化的な背景を持ちながら形成され、現在も多様な国々によってこの文化圏の特色が強調されています。西欧文明やイスラム文明など、他の文化圏との関係性を通じて、その特異性が際立っています。

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