東日流外三郡誌

『東日流外三郡誌』の概要と背景

『東日流外三郡誌』（つがるそとさんぐんし）は、日本の歴史に関する古史古伝の一つであり、主に青森県を含む東北地方の未解明の歴史を探求した文献です。この書は、和田家文書と呼ばれる文献群の中でも特に有名で、古代津軽地方における民族の文明についての興味深い主張を展開しています。しかし、学界ではその真偽が疑問視され、偽作の可能性が高いとされています。

和田喜八郎と文献の登場

『東日流外三郡誌』は1970年代に、青森県五所川原市に住む和田喜八郎によって「天井裏から落ちてきた古文書」として発表されました。当時、和田は古文書の魅力を訴え、その内容を秋田孝季や彼の祖先とされる人物によって編纂されたと伝えています。

この文書は、古代の津軽地方にはヤマト王権から抑圧された民族が文明を持っていたと主張しており、例えば「アラハバキ」という神の名前や遮光器土偶のビジュアルがこの文献を通じて広まりました。また、耶馬台国と呼ばれる国の概要や、複数の民族が存在した事実が詳述されています。

内容の詳細

『東日流外三郡誌』によると、古代日本各地には約15～16の民族が存在し、中でも耶馬台国は兄弟によって治められ、安日彦と長髄彦が有名です。この国は平和に発展していたとされています。また、著者は日向族の起源についても触れており、彼らが台湾の高砂族であるとし、その支配を巫女たちが行っていたとされています。このような内容から、古代の日本の民族や国の関係を新たに提示しようとしました。

津軽に関しては、阿曽辺族という未開の部族が暮らしていたが、後に津保化族によって侵略される過程が描かれています。さらには、中国からやってきた郡公子が津保化族を打破し、その後さまざまな民族が融合して新たな部族が形成されたとされています。この部族が後の蝦夷と呼ばれ、大和朝廷からは異民族として扱われました。

議論と真偽

学界では『東日流外三郡誌』の信憑性について激しい議論が行われてきました。特に、文中に見られる近代の用語や、発見経緯の不自然さが問題視されました。和田喜八郎が発表した当初は、考古学的な調査との整合性が取れず、一部の用語が20世紀のものであることが指摘されました。

そのため、『東日流外三郡誌』は偽書であるとの見解が広まっています。2007年には古田武彦が「寛政原本」を発見したとの報告がありましたが、その内容には賛否が分かれています。多くの研究者は、和田家の文書が文体や内容からも和田喜八郎の手によるものであると認識しています。

結論と影響

『東日流外三郡誌』は、日本の歴史に新たな視点をもたらす試みとして多くの関心を集めていますが、同時にその信憑性に対する疑問も広がっています。文献を通じて、古代日本の文化や民族の多様性を知る手がかりにはなりますが、史料としての位置づけが非常に難しいことも事実です。今後もこの文書を巡る研究と議論が続くことでしょう。

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