東武会沢線

会沢線：知られざる東武の貨物支線の歴史

会沢線は、栃木県安蘇郡葛生町（現在の佐野市葛生）に位置した東武鉄道の貨物線です。主に石灰石やドロマイトといった鉱物資源の輸送を目的として敷設されました。佐野線の終点である葛生駅から、奥地の第三会沢駅までを結び、地域の産業を支える重要な役割を担っていました。

路線概要

1986年の運行停止時点での会沢線の路線データは以下の通りです。

路線距離: 葛生 - 上白石 - 第三会沢間 4.2km
軌間: 1,067mm（狭軌）
駅数: 5駅（起終点を含む）
電化区間: 全線（直流1,500V）
複線区間: なし（全線単線）。ただし、葛生 - 上白石間は会沢線と住友セメントのセメント工場線が単線並列で並行していました。

歴史

会沢線の歴史は、大正時代にさかのぼります。

1917年（大正6年）12月12日: 葛生 - 会沢間の鉄道免許状が下付されました。
1920年（大正9年）8月23日: 葛生 - 第二会沢（後の第三会沢）間が人車線として開業しました（4.4km）。
1925年（大正14年）:
8月5日：人車線を廃止し、改軌・改キロの上、一般貨物線として葛生 - 第三会沢間が開業しました（4.6km）。この際、第一会沢 - 第三会沢間に第二会沢駅が新設されました。
8月23日：蒸気機関車による運行が開始されました。
1928年（昭和3年）7月10日: 上白石駅が開業しました。
1937年（昭和12年）以降: 第三会沢駅が移転、または改キロされました（+0.2km）。
1938年（昭和13年）10月1日: 第二会沢駅が廃止されました。
1966年（昭和41年）6月: 葛生 - 第三会沢間が電化されました。
1985年（昭和60年）12月1日: 第三会沢駅が移転しました（-0.4km）。
1986年（昭和61年）10月21日: 上白石 - 第三会沢間が廃止されました（-3.3km）。
1997年（平成9年）10月1日: 葛生 - 上白石間が廃止され、会沢線は全線廃止となりました。

駅一覧

会沢線の駅は、すべて栃木県安蘇郡葛生町（現在の佐野市葛生）に位置していました。1981年当時、葛生駅のみが一般車扱貨物を取り扱っており、他の駅は専用線発着の貨物のみを扱っていました。詳細な駅名は以下の通りです。

葛生駅
上白石駅
第一会沢駅
第二会沢駅(1938年廃止)
第三会沢駅

廃線後の状況

会沢線は、その役割を終え全線が廃止されましたが、その一部は現在も活用されています。例えば、栃木県道144号築地吉水線の一部区間では、上白石駅前後の線路跡地が道路として再利用されています。これは、廃線となった鉄道の遺構が、地域の生活に新たな形で貢献している好例と言えるでしょう。

会沢線は、短い路線ながらも、地域の産業と人々の生活を支えた重要な存在でした。その歴史は、日本の鉄道史の一コマとして、今もなお記憶されるべきものです。

参考文献

今尾恵介（監修）『日本鉄道旅行地図帳』3号 関東1、新潮社〈新潮「旅」ムック〉、2008年7月
鉄道省 編「葛生・第三會澤間」『鉄道停車場一覧』 昭和12年10月1日現在、川口印刷所出版部、1937年
日本国有鉄道 編「会沢線」『停車場一覧』 昭和47年10月14日現在、日本国有鉄道、1972年
東武鉄道年史編纂事務局 編『東武鉄道六十五年史』東武鉄道、1964年
東武鉄道社史編纂室 編『東武鉄道百年史』 資料編、東武鉄道、1998年

関連項目

日本の廃止鉄道路線一覧
廃線
栃木県道144号築地吉水線
関東地方の鉄道路線
軽便鉄道
* 鉱山鉄道

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