東神戸線

東神戸線（ひがしこうべせん）

東神戸線は、兵庫県神戸市内に将来の重要な道路網として計画されている地域高規格道路です。地域高規格道路は、広域的な高速交通ネットワークの一部を構成し、都市圏内外の交通を円滑化することで、地域間の連携強化や産業・経済活動の活性化に寄与することを目的として指定されます。東神戸線も、このような位置づけのもと、神戸市域における南北方向の交通アクセスを強化するために構想されました。

計画されているルートは、神戸市北区にある阪神高速道路7号北神戸線付近を起点とし、南へ進んで東灘区六甲アイランドに位置する阪神高速道路5号湾岸線付近を終点とするものです。もしこの全線が建設されれば、神戸市内の南北方向への移動が格段に容易になり、特に都心部を迂回する交通や、港湾物流の拠点である六甲アイランドへのアクセス性向上に大きく貢献すると期待されていました。

しかしながら、東神戸線全体の建設計画は、現在のところ事業化に向けた具体的な動きには至っていません。神戸市は、この大規模な計画について慎重に評価を進めており、いくつかの課題を指摘しています。その主な理由の一つが、神戸市内における現在の「南北軸の容量は確保できている」という現状認識です。これは、既存の幹線道路や高速道路網の整備状況を踏まえ、現時点では南北方向の交通需要に対して、供給される道路容量が不足しているという状況ではない、という判断に基づいています。

さらに重要な課題として、「費用対効果」の問題が挙げられています。地域高規格道路のような新規路線の建設には、用地買収費、工事費、維持管理費など、多額の公的資金が必要です。神戸市は、こうした莫大な投資に対して、東神戸線全体の整備によって見込まれる交通円滑化や地域経済への効果が、現時点では十分に見合わない可能性があると評価しています。これらの理由から、東神戸線全体としての建設計画は、費用面や必要性の観点から、現在まで事業化に向けた具体的な進展がない状況にあります。

一方で、東神戸線という名称が示すルートのごく一部については、全体計画とは異なる性質を持つ形で構想が進められています。これは特に「東神戸渡り線」と呼ばれる区間であり、既存の阪神高速道路網の利便性向上を目的としています。この渡り線は、阪神高速道路3号神戸線の深江出入口付近と、阪神高速道路5号湾岸線の魚崎浜出入口付近を結ぶ短い区間が想定されています。阪神高速3号神戸線と5号湾岸線は、それぞれ神戸市東部の主要な東西方向の交通を担う路線ですが、両路線間を直接、かつスムーズに乗り換えることができる箇所は限られています。この渡り線が整備されれば、3号神戸線を利用している車両が六甲アイランドやポートアイランド方面へ向かう際に5号湾岸線へ容易に転線したり、あるいはその逆方向へ移動したりすることが可能になり、周辺の一般道路の混雑緩和や、神戸港に関連する物流の効率化に寄与することが期待されます。

この「東神戸渡り線」の構想については、地域行政の計画においても一定の位置づけがなされています。具体的には、兵庫県が2019年3月に改訂・策定した「ひょうご基幹道路ネットワーク整備基本計画」において、「構想路線」の一つとして明記されました。これは、兵庫県が将来的な整備を視野に入れている重要な道路ネットワークの一部として、この渡り線を認識していることを示しています。したがって、東神戸線全体としての広範な地域高規格道路計画は、費用対効果などの観点から現時点では実現性が低いと判断されている一方で、阪神高速道路の既存路線間を結ぶことで交通結節機能を強化するという限定的な区間については、関係自治体である兵庫県の計画の中で将来的な可能性が残されている、という状況です。

東神戸線という名称は、広範な地域高規格道路としての構想と、阪神高速道路間の連絡線という限定的な構想が併存する、複雑な計画段階にある道路と言えます。全体の計画は停滞しているものの、一部区間については将来的な整備の可能性があるとされており、今後の交通需要の変化や社会情勢によって、その動向が再び注目される可能性があります。現時点では、この計画の全貌や実現時期について確定的なことは言えませんが、神戸市及び兵庫県の将来の道路ネットワークを考える上で、引き続きその動向が注視されるでしょう。

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