東遊運動

東遊運動（ドンズーうんどう）

東遊運動は、19世紀末から20世紀初頭にかけて、フランス領インドシナ、すなわち当時のベトナムで展開された民族独立運動です。ベトナムの人々がフランスの植民地支配から脱却し、独立を目指す動きの中で重要な役割を果たしました。

概説

1883年以来、ベトナムはフランスの保護国となっていました。この状況下で、日露戦争における日本の勝利は、ベトナムの人々に大きな刺激を与えました。1904年頃、ファン・ボイ・チャウ（潘佩珠）は、反仏運動の結社である「維新の会」を組織しました。

1905年、チャウは日本に渡り、武器援助を求めましたが、清の梁啓超や犬養毅らから、武力蜂起よりも人材育成の重要性を説かれました。これを受け、チャウはベトナムの青年たちに日本への留学を呼びかけました。科挙に合格した優秀な青年たち200名以上が日本に留学し、この活動が「東遊運動」として知られるようになりました。

東遊運動は、フランスからの独立を目指し、若い指導者の育成を目的としていました。チャウは同志を募り、民衆からの資金を集め、優秀な青年たちを日本へ送りました。チャウ自身も日本に滞在し、運動を推進しました。彼はその生涯を民族独立運動に捧げました。

日本に留学した学生たちが反仏運動の組織を作り活動を開始すると、フランス側は留学生の家族を投獄したり、送金を妨害するなどして弾圧を強めました。1907年に日仏協約が締結されると、フランスは日本政府に対し留学生の引き渡しを要求しました。日本政府はこれに応じませんでしたが、1909年には留学生全員を国外に追放し、東遊運動は終焉を迎えました。

日本を追放されたチャウは、上海へ逃れ、辛亥革命後の1912年には広東で「光復会」を創設し、武力によるベトナム解放を目指しました。

東遊運動の影響

東遊運動は、短期間で終わったものの、ベトナムの民族意識を高め、後の独立運動に大きな影響を与えました。多くの留学生が、帰国後に各分野で活躍し、ベトナムの近代化に貢献しました。また、この運動は、アジアの他の国々における民族運動にも影響を与え、連帯意識を高めるきっかけとなりました。

関連事項

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* ファン・チュー・チン（潘周楨）

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