東邦丸

東邦丸：太平洋戦争を駆け抜けたタンカーの生涯

この記事では、飯野商事（後に飯野海運と改称）が所有し、太平洋戦争で活躍したタンカー「東邦丸」の初代と二代について詳述します。両船は、日本の石油輸送において重要な役割を担い、激動の時代を生き抜きました。

東邦丸（初代）

飯野商事は、明治時代から日本海軍への燃料供給や人員輸送を担い、大正時代後期には石油輸送事業に本格的に進出しました。1934年の「富士山丸」を皮切りに大型タンカーを建造し、その一環として1936年12月、川崎造船所で建造されたのが初代「東邦丸」です。同型船には「東亜丸」、「極東丸」などがあります。

竣工後、アメリカ西海岸からの石油輸送に従事していた「東邦丸」は、1941年8月、日本海軍に徴用され、特設運送船（給油艦）として真珠湾攻撃に参加しました。その後は第一航空艦隊やMO機動部隊の補給にあたり、珊瑚海海戦、ミッドウェー海戦、第二次ソロモン海戦など、数々の重要な海戦を支援しました。

1943年3月29日未明、昭南（シンガポール）へ向かう途中、マカッサル海峡でアメリカ潜水艦「ガジョン」の攻撃を受け、被雷沈没しました。勇敢にも備砲で反撃を試みましたが、最後は5本の魚雷を命中させられ、海に沈みました。

東邦丸（二代）

太平洋戦争中、戦時標準船の建造が急務となり、飯野海運も多数の戦時標準船を建造しました。その中の1隻が、三菱重工業長崎造船所で1944年5月15日に竣工した二代目の「東邦丸」です。TL型タンカーであり、建造期間はわずか122日でした。

竣工後すぐに南方からの石油輸送に投入され、複数の船団に参加しました。ヒ65船団ではアメリカ潜水艦の攻撃を受けながらも無事昭南に到着し、帰途のヒ68船団では「安芸丸」、「東山丸」、「大鳥山丸」などが沈没する中、奇跡的に生還しました。その後も、ヒ73船団、ヒ76船団、シサ30船団などに所属し、石油輸送を継続しました。

1945年1月、アメリカ軍の攻撃が激化し、「南号作戦」が発令されました。特攻的な輸送作戦に従事した「東邦丸」は、ヒ93船団で昭南を目指しましたが、カムラン湾沖でアメリカ潜水艦「バーゴール」の攻撃を受け、被雷大破しました。沈没は免れましたが、サンジャックで応急修理した後、昭南で修理を受けました。

修理後も、昭南とインドシナ半島間の輸送に従事していましたが、1945年6月15日、サムイ島近海でアメリカ軍機の空襲を受け、被弾炎上し沈没しました。竣工からわずか396日での沈没となりましたが、2TL型タンカーとしては戦後残存船を除き最も長く活動した記録となりました。

同型船

初代「東邦丸」は川崎型油槽船であり、同型船には「東亜丸」、「極東丸」、「日本丸」、「東栄丸」などがあります。二代「東邦丸」は戦時標準船2TL型に属し、同型船には「富士山丸」、「大邦丸」、「海邦丸」、「勝邦丸」など多数の船舶が存在しました。これらの船舶は、太平洋戦争における日本の海上輸送を支えた重要な戦力でした。

まとめ

「東邦丸」初代と二代は、激動の太平洋戦争において、日本の石油輸送の最前線で活躍したタンカーでした。数々の危険を乗り越えながらも、最後は敵の攻撃によって沈没するという運命を辿りました。これらの船舶の活躍と犠牲は、日本の戦争史において重要な一端を担っていると言えるでしょう。彼らの物語は、戦争の残酷さと、人々の勇敢さを同時に伝えています。今後も歴史資料を調査し、より詳細な情報を加えていく予定です。

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