松下康雄

松下康雄：激動の時代を駆け抜けた日銀総裁

松下康雄（まつした やすお）は、1926年1月1日に兵庫県神戸市で生まれ、2018年7月20日に92歳で生涯を閉じた日本の官僚、銀行家です。東京大学法学部を卒業後、大蔵省に入省し、主計局主査時代から次官候補として注目を集めました。主計、主税、銀行畑を幅広く経験し、1982年には大蔵事務次官に就任。「大物次官」として2年の任期を全うしました。

民間から日銀総裁へ

退官後、松下は日本開発銀行や日本輸出入銀行といった「ロイヤル・ロード」を歩まず、太陽神戸銀行（後のさくら銀行）に入行。1987年に頭取に就任し、1990年には三井銀行との合併を成功させました。その後、日銀総裁候補として名前が挙がり、大蔵省出身の有力候補を抑えて第27代日本銀行総裁に就任しました。これは、長岡實元事務次官の強い推薦があったためとされています。

バブル崩壊後の苦難

日銀総裁としての松下は、バブル崩壊後の経済再建という困難な課題に直面しました。超円高、金融機関の腐敗と不良債権、そしてデフレ経済の影といった厳しい状況下で、松下は辣腕を振るうことができず、不良債権の更なる増加とデフレ経済の進行を許してしまいました。さらに、在任中には大蔵省接待汚職事件のスキャンダルが発覚し、その責任を問われる形で日銀副総裁と共に辞任することとなりました。

略歴

1950年：大蔵省入省
1952年：フルブライト留学生としてシラキューズ大学へ留学
1953年：銀行局金融制度調査部
1955年：笠岡税務署長
1956年：泉大津税務署長
1957年：国税庁査察課長補佐
1959年：主税局調査課課長補佐
1962年：大臣官房文書課課長補佐
1964年：主計官補佐（運輸・国鉄係主査）
1964年：主計官補佐（公共事業係主査）
1966年：大臣秘書官事務取扱
1968年：主計官（農林担当）
1971年：銀行局銀行課長
1972年：大臣官房秘書課長
1974年：近畿財務局長
1975年：主計局次長
1978年：大臣官房長
1980年：主計局長
1982年：大蔵事務次官
1984年：退官
1986年：太陽神戸銀行取締役
1987年：太陽神戸銀行頭取
1990年：太陽神戸三井銀行会長（1992年より、さくら銀行）
1994年：さくら銀行代表取締役相談役
1994年：日本銀行総裁
1998年：日本銀行総裁退任
2000年：電源開発監査役
2005年：瑞宝大綬章受章
2018年：死去。叙従三位。

同期

松下の旧大蔵省入省同期には、渡辺喜一（中小企業金融公庫総裁）、吉野実（防衛事務次官）、福島量一（国土事務次官）など、多くの有力者がいました。

関連項目

兵庫県出身の人物一覧

松下康雄は、激動の時代の中で、大蔵省官僚、銀行家、そして日銀総裁として、日本の経済界に大きな足跡を残しました。その功績と苦難は、後世に語り継がれることでしょう。

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