松井正直

松井 正直（まつい まさなお）

松井正直は、1917年12月9日に長野県の上田市で生まれ、日本の農芸化学者として名高い存在です。彼の業績は、生理活性天然物の合成研究において、極めて高い評価を得ています。東京大学名誉教授であり、理化学研究所名誉研究員として多くの重要な研究に携わりました。

学歴とキャリアのスタート

松井は、旧制上田中学を卒業後、1938年に旧制静岡高等学校理科を卒業し、続いて1941年に東京帝国大学農学部農芸化学科を修了しました。卒業後、彼は台湾製糖に入社し、理化学研究所に研究員として派遣されました。1942年には理研研究員として栄養食品部門に異動し、その後1945年からは住友[[化学]]に勤務しながら京都帝国大学に4年間派遣されるという貴重な経験を積みます。

彼は1953年に東京大学の助教授に就任し、1956年には教授に昇進。1967年から1978年にかけては理化学研究所の主任研究員も兼任しました。1979年からは東京都立立川短期大学の学長を4年間務め、1985年には日本学士院の会員に選出されました。さらに、香料やテルペン、精油化学に関連する討論会では代表幹事としてその発展に寄与しました。

画期的な研究と合成

松井は天然物の化学合成において数々の成果を上げました。特に、天然殺虫剤ロテノンの化学合成に成功し、ピレトリン系殺虫剤の工業利用に大きく貢献しました。また、植物ホルモンの一種であるジベレリンや昆虫のホルモン、フェロモンの合成にも成功しています。さらに、抗生物質であるバリオチンの合成や、ビタミンAの工業的合成法の確立も行いました。

彼の研究は、天然香料の合成にも影響を与え、古代から人々に利用されてきたラバンジュロールやジャスモンを合成することにも成功しました。

表彰と栄誉

松井の功績は広く認められ、次のような多くの学術賞や栄典を授与されました。

• - 1951年：日本農学会農芸化学賞
• - 1958年：日本ビタミン学会内藤賞
• - 1964年：日本化学会技術賞
• - 1978年：日本農芸化学会鈴木賞
• - 1979年：紫綬褒章
• - 1981年：日本学士院賞（森謙治と共同受賞）
• - 1988年：勲二等瑞宝章
• - 1989年：有機合成化学協会賞特別賞

松井正直は2012年3月12日に94歳で逝去しましたが、彼の業績は今もなお多くの研究者に影響を与えています。彼の生涯は、日本の農芸化学の発展に大きく寄与したものであり、多くの人々に感銘を与える存在でした。

もう一度検索