松倉城 (越中国)

松倉城

松倉城（まつくらじょう）は、現在の富山県魚津市、かつての越中新川郡松倉村に存在した日本の山城です。別名として金山城や鹿熊城とも呼ばれ、富山県の史跡に指定されています。越中において、増山城、守山城と共に越中三大山城の一つに数えられ、「とやま城郭カード」のNo.3にも選ばれています。

構造

この城は、松倉山（鹿熊山）の山頂、標高430.9メートル地点に築かれています。規模は越中最大級とされる広大さを誇り、三方が急峻な断崖によって守られた天然の要害に、五つの郭が配置されていました。城の中心である本丸跡からは、新川平野一帯を見渡すことができ、その優れた眺望は現在も楽しむことができます。また、本丸跡にはかつて数百本の桜が植えられていたと伝えられ、現在も昭和初期に植えられたヤマザクラ約40本が現存しており、「富山さくらの名所70選」にも選定されています。1995年には、入城の門広場が整備され、訪れる人々の利便性が向上しました。

歴史

松倉城は、南北朝時代の1335年頃に築城されたと考えられています。築城後は普門俊清や桃井直常が城主を務めたと伝えられますが、1370年の長沢の戦いの後、幕府方によって一旦平定されたとされています。南北朝時代を経て、この城は椎名氏の居城として発展し、越中東部における政治的・軍事的な中心拠点となりました。城の経済基盤の一つとして、周辺で豊富な金が産出された松倉金山を有していました。椎名氏は最盛期には富山県呉東地域にまで勢力を伸張させましたが、戦国時代の1570年、当時の城主である椎名康胤が、それまで宗主としていた上杉氏から武田氏へと離反したことが転機となります。これに対し上杉謙信が松倉城を攻囲しましたが、椎名氏は約百日間に及ぶ籠城によって攻撃を耐え抜き、謙信を越後へと撤退させることに成功しました（尻垂坂の戦い）。しかし、1572年5月、武田信玄の西上作戦に呼応した椎名康胤が再び上杉氏に対立した際、激しい攻防の末に松倉城は上杉方に明け渡されました（松倉城の戦い）。

城が上杉氏の支配下に入ってからは、河田長親が城将として配されました。天正8年（1580年）10月には、神保長住による攻撃を退けています。天正10年（1582年）6月に魚津城が落城した直後、松倉城も織田信長の勢力下に置かれましたが、本能寺の変による混乱が発生すると、すぐさま上杉氏の支配へと戻りました。その後、天正11年（1583年）、城将を務めていた須田満親は佐々成政に城を明け渡し、信濃の海津城へ移りました。松倉城を得た佐々成政でしたが、豊臣秀吉による富山の役において、前田・上杉両軍に挟撃されたうえ秀吉の大軍の前に降伏し、天正15年（1587年）に肥後へ移封されるも、一揆が発生し失脚しました。文禄4年（1595年）、前田利長に新川郡が加増され、土肥氏や舟見氏といった上杉家の越中衆から郡内の諸城が引き渡されました。前田氏は、山麓の鹿熊にあった城下町を魚津へ移転させています。松倉城自体は、慶長年間に廃城になったと考えられています。

遺構・復元施設

城跡には、巨石に「松倉城址」の石板が嵌め込まれた城址碑や案内板が設置されています。天守入口付近には、桃井氏から須田満親に至る歴代城主の功績を称える「松倉城主之碑」があります。本丸跡には、富山市方面を遠望できる写真パネル台も設けられています。また、1/1000の縮尺で城跡の全景を示す「松倉城跡地形模型」や、発掘調査の様子を写真と共に紹介する「松倉城跡の構造」絵図なども見られます。その他、平ノ峰（のろし台）へ続く整備された山道、水飲場跡、本丸跡南の曲輪にある八幡堂社殿、旧城下町と本丸を結ぶ古道（一部遊歩道として整備）などが確認できます。

近隣施設など

城下町が存在したとされる鹿熊集落の入口には、魚津市指定史跡である「石の門砦」があります。これは松倉城の支城群の中で唯一現存する石垣です。また、角川ダム側の登城口には、魚津市のイメージキャラクター「ミラたん」が写真とイラストで紹介する「松倉城とその支城群」の案内板が設置されています。椎名氏の重要な財源であった松倉金山も近くに位置し、江戸時代初期には加賀藩によって経営された越中七金山の一つとされました。坑道跡などが残されていますが、現在、危険なため立ち入りは禁止されています。

支城

松倉城は、魚津市の山間部一帯に複数の山城からなる支城群を形成していました。主な支城には、魚津城、水尾城、北山城（金山城）、小菅沼城、升方城（升形山城）、坪野城、天神山城などがあります。

イベント

毎年5月下旬には、松倉城跡、升方城跡、北山城跡で「戦国のろし祭り」が開催されます。

交通

あいの風とやま鉄道魚津駅または富山地方鉄道新魚津駅（北陸新幹線・黒部宇奈月温泉駅で乗り換え）から自動車で約25分
市民バス・松倉ルート「鹿熊小学校前」バス停下車
北陸自動車道 滑川ICから約20分
北陸自動車道 魚津ICから約25分
城址には駐車場があります。

関連項目

上杉氏
魚津城
日本の城一覧
増山城（富山県砺波市）
守山城（富山県高岡市）

外部リンク

* 魚津市内の指定文化財リスト

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