増山城

増山城（ますやまじょう）

増山城は、富山県砺波市、かつての越中国砺波郡・射水郡・婦負郡の三郡境付近にあった日本の山城で、現在は国の史跡となっています。地元では「とやま城郭カードNo.38」としても親しまれ、続日本100名城にも選定されています。

落語家の春風亭昇太さんが名誉城主を務めていることでも知られています。

概要

和田川右岸の山上に築かれた増山城は、松倉城、守山城と並び越中三大山城と称されました。その歴史は南北朝時代に遡り、貞治2年（1363年）の史料に「和田城」として登場します。当初は桃井直常方の勢力が守備していましたが、後に幕府軍によって攻略されたと考えられています。

戦国時代には、神保氏の重要な拠点となり、永禄3年（1560年）に神保長職が上杉謙信に富山城を攻略された後、増山城に立て籠もりました。当時の謙信の書状には、「増山は元来険しい地であり、多くの兵を配置すれば、容易に攻略は不可能である」と記されており、その堅固さが伺えます。

永禄5年（1562年）に長職が上杉氏に降伏した後、増山城は神保氏の本拠地となりますが、神保家内の反上杉派が一向一揆と結んで抵抗したため、天正4年（1576年）には上杉謙信によって攻略されました。天正6年（1578年）の御館の乱では、上杉景勝方の吉江宗信が増山城を守備しました。

その後、天正9年（1581年）に織田軍の攻撃によって落城し、佐々成政が重臣を配置して守りました。前田氏の治下では、中川光重、山崎長鏡が城代を務めましたが、元和の一国一城令によって廃城になったと考えられています。

2009年（平成21年）には国の史跡に指定され、2017年（平成29年）には続日本100名城に選定されました。

年表

1362年（貞治元年）：二宮円阿が和田城（増山城の前身）を警固
1506年（永正3年）：芹谷の合戦で長尾能景が一向一揆勢力と対決し討死
1560年（永禄3年）：長尾景虎が越中に侵攻し、神保長職が増山城に逃れる
1562年（永禄5年）：上杉謙信が増山城を攻め、神保長職が降伏
1568年（永禄11年）：神保長職が上杉氏と結び、一向一揆と戦う
1572年（元亀3年）：一向一揆勢力が増山城を拠点とする
1576年（天正4年）：上杉謙信が増山城を攻略し、吉江宗信が城主となる
1581年（天正9年）：織田勢が増山城を焼き討ち
1583年（天正11年）：佐々成政が越中を平定
1585年（天正13年）：佐々成政が増山城を改修。豊臣秀吉が越中に侵攻し、佐々成政が降伏。前田氏の領有となる
1586年（天正14年）：上杉景勝が増山城主・中川光重の饗応を受ける
1615年（元和元年）：廃城

形式と構造

増山城は、増山城を中心として、北に隣接する亀山城や孫次山砦、南に位置する赤坂山屋敷・団子地山屋敷周辺を総称して「増山城郭群」と呼んでいます。それぞれの場所に特徴的な遺構が残っています。

各郭の特徴

一ノ丸
北、東、西の三方は切岸と竪堀で守られ、南側には坂虎口があります。
二ノ丸
主郭と考えられ、長大な堀切で囲まれた防御性の高い郭です。籏台石が残っています。
石垣
二ノ丸虎口下に城跡内で唯一の石垣跡が残っています。
籏台石
二ノ丸平坦面の中央にある、水が溜まっている石です。
櫓台
城跡内の最高所に位置します。
三ノ丸
オオヤシキとも呼ばれ、空堀と切岸に囲まれています。
安室屋敷
二ノ丸の北に位置します。
馬之背ゴ
城下町に面した斜面に土塁跡が残っています。
無常
二ノ丸南側に突き出した郭です。
御所山屋敷
主要郭群の北端に位置します。
池ノ平等屋敷
神保夫人入水の井戸（池）があることから名付けられました。
又兵衛清水
城中の飲料水に用いられた湧き水で、とやま名水百選に選ばれています。
空堀
城内に敵の侵入を防ぐ目的で計画的に配置されています。
七曲り
大手口の一つで、曲がりくねった登山道です。
法花坊峠遺構
発掘調査で8世紀後半と16世紀後半の遺構・遺物が確認されました。
亀山城
増山城郭群を構成する城郭でもっとも高所にあります。
孫次山砦
増山城郭群を構成する城郭でもっとも北に位置します。

城下町

和田川を挟んで城の対岸に城下町の遺構が残っており、当時の町並みを偲ばせる地名や寺院の塚などが残っています。

増山遺跡の発掘調査

発掘調査によって、建築物の遺構や陶磁器などが出土しており、城下町の様子が明らかになっています。

周辺

周辺には、長尾能景塚や長尾為景塚など、歴史的な史跡が点在しています。

調査歴

砺波市教育委員会によって、1997年（平成9年）から発掘調査が継続的に行われています。

増山城は、その歴史的価値と美しい自然景観から、多くの人々に愛されています。ぜひ一度訪れて、その魅力を体感してください。

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