松前泰広

松前泰広：動乱の時代を駆け抜けた旗本の生涯

松前泰広（まつまえ やすひろ）は、寛永2年（1625年）に生まれ、江戸時代前期に活躍した旗本です。蝦夷地松前藩の第2代藩主・松前公広の三男として生を受けました。

若き日の参勤と後見

寛永19年（1642年）3月、泰広は兄で第3代藩主である氏広の名代として江戸に参勤します。正保3年（1646年）12月4日には小姓組に列し、1000俵を賜り旗本となりました。正保5年（1648年）に氏広が死去すると、後継者である高広が若年であったため、その後見役を務めます。

シャクシャインの戦いと和平工作

寛文9年（1669年）にシャクシャインの戦いが勃発すると、事態は急展開を迎えます。当時、5代藩主であった松前矩広が11歳と若年であったため、泰広は江戸幕府より討伐軍の総大将に任じられ、同年8月10日に子の嘉広、当広と共に松前へ入ります。国縫の家老・蠣崎広林率いる部隊と合流し、1500丁の鉄砲をもってシャクシャイン軍を敗走させました。

しかし、泰広の功績は武力鎮圧だけに留まりません。同年10月22日、ビボク（現在の新冠町）において、シャクシャインが和睦のために泰広の陣を訪れ酒宴を催した際、佐藤権左衛門の謀略によってシャクシャインは殺害されます。その後、蠣崎広林にシブチャリを攻撃させました。翌年、泰広は江戸に戻り、蜂起鎮圧の旨を将軍に報告。その功績が認められ、黄金2枚を賜り、常陸国真壁郡に500石を加増されました。

寛文12年（1672年）7月、蜂起以来抗戦を続けてきた浦川（現浦河町）のアイヌが和睦に応じ、使者を国縫へ派遣したため、幕府より松前目付に任命され、3人の子を伴い松前に赴き、事態の収束に尽力しました。

日光目付と晩年

延宝3年（1675年）1月26日、泰広は使番となり、同年5月19日には日光目付として日光に赴任します。同年12月26日には布衣を着用することを許されました。延宝5年（1677年）4月19日には再び日光に赴き目付代を務めます。翌延宝6年（1678年）4月11日には、松平乗久へ肥前国唐津城の城地引渡役を命じられます。同年9月4日、職を辞して小普請となりました。

延宝8年（1680年）、泰広は56歳でその生涯を閉じました。

系譜

父：松前公広（1598-1641）
母：蠣崎氏
正室：北条氏長娘
長男：松前嘉広（1652-1731）
継室：牧野儀成娘
生母不明の子女
次男：松前兼広
男子：松前当広 - 直広

松前泰広は、激動の時代において、武力と外交手腕を駆使し、松前藩の安定に大きく貢献した人物として、その名を歴史に刻んでいます。

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