松山城 (豊前国)

松山城（福岡県苅田町）

松山城は、福岡県京都郡苅田町松山に位置する山城です。苅田町の指定史跡となっており、その歴史は平安時代にまで遡ります。

概要

標高128mの松山山頂付近に主郭が設けられ、二の郭、三の郭が連なる構造でした。しかし、現在は採石場となっており、三の郭や出城は破壊されています。それでも、畝状縦掘りや石段などの遺構が一部現存し、往時の面影を偲ぶことができます。

本丸跡は東西22メートル、南北32メートルの長方形の平地で、大手口には石塁が残っています。本丸城台の東側には、高さ３メートルの石塁が現存しています。

本丸の北から西、南にかけては、３メートルの落差で幅10メートルの腰曲輪が設けられています。さらに東へは、幅20メートルほどの曲輪が階段状に続き、虎口を経て二の郭に至ります。二の郭は東西35メートル、南北12メートルの規模で、北側と南側は高さ２メートルの土塁で囲まれています。二の郭の東には三の郭、小城が隣接していましたが、採石によって消滅しています。

沿革

平安時代から室町時代

伝承によれば、740年（天平12年）に藤原広嗣が朝廷に反旗を翻した際（藤原広嗣の乱）に築かれたとされています。その後、940年（天慶3年）の藤原純友の乱の際には、神田光員の居城となりました。神田氏が在城していましたが、1157年（保元2年）に平康盛によって滅ぼされ、康頼の三男・平信盛が居城としました。1185年（文治元年）には、信盛の子・平吉盛が壇ノ浦の戦いに従軍して敗北し、入水自殺を遂げました。1196年（建久7年）頃には、豊前国に下向してきた城井氏の始祖である宇都宮信房が支配しました。その後、長野氏当主・長野直盛が松山城を支配しました。

1336年（南朝：延元元年、北朝：建武3年）には、後醍醐天皇の建武政権に反旗を翻した足利尊氏が九州に下向し、それに従う少弐頼尚が松山城を攻略し、その子・少弐頼房を城主に据えました。

周防国の大内氏が豊前国を含む北九州地方へ勢力を拡大すると、松山城を豊前国の要衝と位置づけ、重臣であった杉氏の杉興信を守護代に任じ、城主としました。1398年（応永5年）には、大友氏鑑が大友親世に反乱を起こした際に氏鑑方の攻撃によって落城し、城代の杉光治が討死しました。大内氏は松山城奪回後、安芸国の国人であった天野顕義が入城し、その後に討死した光治の兄である杉弘信が入りました。その後は杉氏が在城し、1551年（天文20年）までその支配が続きました。

戦国時代の到来と毛利・大友氏の狭間で

陶隆房の謀反（大寧寺の変）によって大内氏当主・大内義隆が自害すると、1556年（弘治2年）には毛利氏に帰順した松山城主で豊前守護代であった杉重吉が大友義鎮配下・田原親宏の攻撃によって敗走し、松山城は落城しました。

防長経略によって大内領を併呑した毛利元就は、大内領であった北九州への侵攻を開始し、松山城を攻略して、天野隆重、杉氏の一族・杉重良を城に入れました。1562年（永禄5年）には大友氏の攻撃を受けましたが、1563年（永禄6年）に足利義輝の斡旋によって毛利氏と大友氏の間に和睦が成り、松山城は大友氏に引き渡されました。

その後は、長野祐盛（秋月種実の弟説あり）が城主となりましたが、毛利氏や大友氏が京都郡に侵攻するに及び、度々従属先を変え続けました。そのため、永禄末期から天正年間にかけて大友氏、毛利氏から大規模な討伐を受け、長野氏は零落しました。また、1579年（天正7年）に杉重良が毛利氏に反旗を翻して松山城を退去し、蓑島城に入りました。重良は高橋元種の攻撃を受けて討死し、嫡男の杉元良は毛利氏家臣として続きましたが、豊前国支配に関わっていた杉氏は、ここにその豊前支配を終えました。

1581年（天正9年）には、毛利方であった長野祐盛が松山城に籠もり、同じ毛利方の高橋元種を攻撃する事態が起きました。

豊臣秀吉の九州征伐と関ヶ原の戦い、元和偃武

1586年（天正14年）に豊臣秀吉が九州征伐を開始すると、主力であった毛利軍が松山に入り、近隣の豪族である城井朝房や長野氏等がこぞって帰順しました。松山城には毛利氏家臣・仁保元豊や湯浅将宗が入りました。島津氏降伏後、松山城は黒田孝高の所領となり、1600年（慶長5年）の関ヶ原の戦いの後に、豊前国を領した細川忠興の所領となりました。

松山城は1606年（慶長11年）に廃城となり、800年に及ぶ城の歴史に幕を閉じました。

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