松山城 (備中国)

概要

備中松山城は、岡山県高梁市内山下に位置する山城で、別名高梁城とも呼ばれます。一般的には、各地にある同名の城との混同を避けるため、備中松山城として知られています。この城は、日本100名城の一つであり、現存する12の天守を持つ城の中で唯一の山城です。臥牛山の山頂から南稜にかけて遺構が残り、その一つである小松山城跡に現存天守があります。

臥牛山は四つの峰からなり、本丸、二の丸、三の丸は小松山に階段状に配置されています。大松山、天神の丸、前山にも遺構が見られます。海抜約430mの本丸へは、麓の城下町から約1,500m、徒歩で約1時間ほどの道のりです。この城は戦に備えて築かれた「詰の城」であり、通常はあまり使われていなかったと考えられています。

江戸時代の備中松山[[藩]]は、山城の不便さから、山麓の城下町に「御根小屋」と呼ばれる藩主の御殿と武家屋敷を設け、そこで藩政を行いました。現在、御根小屋の跡地は岡山県立高梁高等学校となっています。備中は小藩に細分化されており、備中松山[[藩]]の石高は約6万石でした。

城跡は国の史跡に指定されており、江戸時代に建てられた天守、二重櫓、土塀の一部は重要文化財に指定されています。その他にも、石垣、復元された櫓、門、土塀が現存しており、日本三大山城の一つとされています。

歴史

鎌倉時代から安土桃山時代

1240年、秋庭三郎重信が備中有漢郷の地頭となり、大松山に最初の城を築きました。1331年頃、高橋宗康が小松山まで城を拡張しました。その後、城主は上野氏、庄氏、三村氏と変遷します。

戦国時代、三村元親の時代には、大松山と小松山を範囲とする大規模な城塞となりました。1570年、三村元親が宇喜多直家を迎え撃つために出撃した際、直家と通じた庄高資・庄勝資親子に松山城を占拠されますが、翌年、穂井田元清の協力で庄高資を討ち、城を奪還しました。1574年、三村元親は毛利氏を離反し織田信長に寝返ります。翌年にかけて、三村氏と毛利氏の間で争いが続き、城は毛利方の小早川隆景によって落とされ、元親は自害しました。その後、城は毛利氏の領有となりました。

江戸時代

江戸時代には、城主は池田氏、水谷氏、安藤氏、石川氏と入れ替わり、最後の城主は板倉氏でした。1600年の関ヶ原の戦いで毛利氏が西軍に敗れた後、江戸幕府は城番を置きました。この頃、麓に御根小屋が築かれました。1617年、池田長幸が入城し立藩しますが、1641年、後継ぎがなく断絶します。その後、水谷勝隆が5万石で入封し、2代勝宗は天守を建造するなど大規模な修築を行いました。しかし、3代勝美が後継ぎなく亡くなり、水谷家は断絶。その後、安藤重博、石川総慶を経て、板倉勝澄が入り、明治時代まで板倉氏が8代続きました。

1868年、戊辰戦争で松山藩は朝敵とされましたが、執政の山田方谷の決断により無血開城しました。

近現代

1873年、廃城令が公布され、御根小屋は取り壊されました。山城は7円で売却されましたが、不便な場所にあるため放置され、荒廃が進みました。昭和初期、高梁中学校教諭の信野友春が山城を調査し、詳細な記録を著したことがきっかけとなり、修復の機運が高まりました。1930年から1940年にかけて修理が行われ、二重櫓、天守の順で修復されました。この修復には地元の人々も協力しました。1941年には天守、二重櫓、三の平櫓東土塀が国宝に指定され、その後重要文化財となりました。1956年には城跡が国の史跡に指定され、1960年からは高梁市が管理団体となりました。1994年からは本丸の復元整備が行われ、2006年には日本100名城に選定されました。

天守

松山城の天守は、毛利氏時代から存在していたと考えられています。現在見られる天守は、1681年に水谷勝宗が造営したとされていますが、1600年に小堀政次、政一が建てたものを改修したという説もあります。現存する天守は2層2階で、複合式望楼型です。西面に付櫓が附属しており、入り口はそこにあります。天守に通じる石段は、敵の侵入を遅らせるために直角に曲げられています。1階には長囲炉裏がありますが、火の使用は禁じられていました。2階には、神を祀った御社壇があります。天守の高さは約11mで、現存する12の天守の中では最も小さいですが、最も高所に位置しています。外観は、腰板張りで、唐破風出窓や折れ曲がり出窓など、特徴的なデザインが施されています。

問題点

石垣崩落の危険性

大手門跡後方の巨岩と、その上に載る石垣は圧巻ですが、巨岩の割れ目に生えた樹木の成長により、割れ目が拡大しています。石垣の重みで岩がずれ、石垣が変形し、崩落の危険性が指摘されています。そのため、高梁市教育委員会は京都大学防災研究所と共同で監視システムを設置し、調査・観測を行っています。

獣害

臥牛山には野生の猿が生息しており、建造物を破損させる被害が出ていました。そのため、主要建造物の周囲に高圧電線の柵を設置し、侵入を防止しています。また、登城道路脇にはフェンスが張られ、猿と同時に猪による農作物の被害を防いでいます。

雲海

備中松山城は、竹田城のように雲海に浮かぶ姿が見られることがあり、その姿は「天空の城」と称されます。雲海展望台から見ることができます。雲海が発生しやすい時期は9月下旬から4月上旬の早朝で、特に10月下旬から12月上旬が可能性が高いです。風がなく、よく晴れて、寒暖差が大きいことが条件です。

アクセス

本丸

松山城へのアクセスは、標高87mの松山城登山口バス停、標高196mの城見橋公園駐車場、標高291mのふいご峠駐車場を利用できます。土日祝日や観光シーズンには、城見橋公園とふいご峠の間でシャトルバスが運行し、自家用車は通行禁止となります。徒歩での天守までの所要時間は、ふいご峠から約20分、城見橋公園から約40分、松山城登山口バス停から約50分、備中高梁駅から約90分です。

雲海展望台

雲海展望台は、備中松山城とは別の場所にあり、自動車で約10分でアクセスできます。展望台付近には駐車スペースがありますが、混雑時には路上駐車が必要となります。JR備中高梁駅からは観光乗合タクシーが運行しており、早朝に雲海見学ツアーもあります。徒歩でのアクセスは約3時間かかるため、推奨されていません。

利用案内

開城時間は4月から9月は9時〜17時30分、10月から3月は9時〜16時30分です。入城は閉城時刻の30分前までです。休城日は12月29日から1月3日です。入城料は大人500円、小中学生200円です。

その他

ロケ地

大河ドラマ『真田丸』のオープニング映像に使用されました。

猫城主

猫城主として「さんじゅーろー」がいます。

脚注

注釈

出典

参考文献

西ヶ谷恭弘編『定本日本城郭事典』秋田書店、2000年。
『国指定重要文化財備中松山城』現地配布パンフレット

外部リンク

備中松山城 - 高梁市公式ホームページ
備中松山城 - 高梁市観光協会公式ホームページ
松山城 - YouTubeチャンネル（雲海展望台ライブカメラ）
備中松山城略史- 高梁市
備中松山城（岡山県高梁市）の歴史・見どころ・地図・アクセス | 攻城団
国指定文化財等データベース
全国遺跡報告総覧－奈良文化財研究所
探訪・岡山県高梁市備中松山城雲に浮かんで突然名所に - 産経新聞撮影
雲海出現NAVI・備中松山城展望台 - 三菱自動車工業
『備中松山城』 - コトバンク

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