松山踊り

岡山県高梁市の伝統、松山踊り

松山踊りは、岡山県高梁市で受け継がれる伝統的な盆踊りです。「備中たかはし松山踊り」として、毎年8月14日から16日の3日間開催され、多くの人々で賑わいます。この踊りは、真庭市蒜山地方の大宮踊、笠岡市白石島の白石踊と並び、岡山三大踊りの一つに数えられています。

踊りの種類

松山踊りは、地踊り、仕組踊り、ヤトサの3種類から構成されています。これらの踊りは、それぞれ異なる起源と特徴を持っています。

地踊り

地踊りは、江戸時代から町人を中心に踊られてきた踊りです。櫓を中心に輪になり、反時計回りに進むのが特徴です。踊りの所作が単純なため、誰もが気軽に参加できます。音頭取りの歌に合わせて、和太鼓と三味線の伴奏で踊ります。かつては、各町内で独自の音頭取りがいましたが、現在は統一されています。

仕組踊り

仕組踊りは、武士が中心となって踊った踊りです。演目ごとに衣装や踊り方が異なり、歴史的な出来事や物語が演じられます。踊り手は特別な扮装をし、演劇のように踊ります。かつては武士のみが踊ることを許されていましたが、明治時代以降、一般の人々も踊るようになりました。

ヤトサ

ヤトサは、地踊りと同じく輪になって踊りますが、時計回りに進む点が異なります。軽快なリズムと平易な旋律が特徴で、多くの人に親しまれています。音頭取り、和太鼓、三味線に加えて、鉦の伴奏で踊られます。昭和初期に高梁に伝わり、当初は正式な松山踊りとはみなされませんでしたが、次第に人気を集め、松山踊りの一部として定着しました。

歴史

松山踊りの歴史は、1648年、当時の備中松山藩主、水谷勝隆が五穀豊穣を祈り、秋祭りで踊らせたことに始まります。その後、城下町で盆踊りとして発展しました。

当初、地踊りは町人、仕組踊りは武士と、踊る人々が分かれていましたが、安政年間には町人も仕組踊りを踊るようになりました。明治維新後、両方の踊りが一般の人々に広まりました。

1962年には、岡山国体の歓迎演技として松山踊りが披露され、踊りの統一化が図られました。1964年には松山踊り音頭保存会が発足し、地踊りの伝承に努めています。また、1965年には、歌手の村田英雄が地踊りのレコード盤を発表しました。

2020年と2021年には、新型コロナウイルスの影響で中止となりました。これは、記録が残る限りでは、感染症が蔓延した1899年以来の中止でした。

衣装

地踊り・ヤトサ

踊り子の衣装は、浴衣、文庫帯、白足袋、草履、編笠が基本です。編笠には、あご紐とリボンが付いています。衣装は、連ごとに統一されています。音頭取りは、浴衣、兵児帯、草履、手拭いを身につけ、扇子や団扇を持ちます。太鼓は、法被、ぱっち、鉢巻、当てどもを着用します。

仕組踊り

仕組踊りの衣装は、演目によって異なりますが、一般的には、白足袋、黒または茶色の袴、着物（白または水色が多い）、腰に白い紐帯で刀を差します。また、扇子と白鉢巻を身につけます。

歌詞

地踊り

地踊りの歌詞は、七、七、七、七調が基本で、物語調の歌詞が繰り返されます。「チョイト」という掛け声と、「ハアーリャサー　ヨーイヤサ」という囃子唄が特徴的です。

ヤトサ

ヤトサの歌詞も、地踊りと同様の形式で、「ドッコイショー」という掛け声と、「ハーヤトサーコラサー　ドショカーイナ」という囃子唄が挿入されます。ヤトサは、地踊りよりもテンポが速く、終盤にはさらにテンポアップされます。

仕組踊り

仕組踊りの歌詞は、七・五・七・五字からなる4節を反復する形式で、古い口説き形式をよく残しています。物語の内容は演目によって異なり、長編の物語が語られることもあります。「ハーエートーエ　エート」という枕詞で始まり、「ハアーリャサー　ハーヨーイヤサ」という囃しが挿入されます。

備中たかはし松山踊り

「備中たかはし松山踊り」は、毎年8月14日から16日の3日間、備中高梁駅前大通りで開催される松山踊りのイベントです。このイベントは、備中たかはし松山踊り保存会が主催し、毎年10万人もの人が訪れます。岡山県下最大の盆踊りです。

踊り競演会

イベント期間中には、一般参加の踊りに先立ち、地踊り・ヤトサの踊り競演会が行われます。踊りを披露する団体を「連」と呼び、子供連や団体連が競い合います。踊りの出来栄えは審査され、入賞連は表彰されます。

一般参加の踊り

踊り競演会終了後には、一般の人々も踊りの輪に加わることができます。地踊りとヤトサが交互に演奏され、終了時刻まで途切れることなく続きます。踊りの輪への参加は自由です。

テレビ放送

イベントの様子は、吉備ケーブルテレビをキー局として、岡山県内のケーブルテレビで生放送されます。

開催期間の変遷

開催期間は、1955年頃から1981年頃までは4日間でしたが、その後は3日間となっています。ただし、災害の影響で短縮された年もありました。

文化財指定

松山踊りは、岡山県指定重要無形民俗文化財および高梁市指定重要無形民俗文化財に指定されています。保護団体は、松山踊り保存会と松山踊り実行委員会事務局です。

松山踊りが登場する作品

松山踊りは、映画「家族の日」にも登場しています。


松山踊りは、地域の人々に愛され、受け継がれてきた伝統文化です。その歴史と魅力を、ぜひ現地で体感してください。

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