松岡洋子 (声優)

松岡洋子

日本の声優、女優として、アニメや外画吹き替えを中心に多岐にわたる活躍を見せる人物。特に少年役を得意とし、その元気で活発な声質で多くのキャラクターに命を吹き込んできた。東京都出身。81プロデュース所属。

生い立ちと少年期

松岡洋子の幼少期は、一般的な女の子とは一風変わった環境で育まれた。男子誕生を望んでいた父親の意向により、「松岡家の長男」として育てられることを決められたからだ。小学校入学までは髪を短く刈り上げ、スカートではなく常にズボンを履き、男の子向けの遊びを教え込まれた。近所の人から「男の子？女の子？」と尋ねられると、「ボク、男の子！」と得意気に答えるほど、自身もその気になっていたという。おままごとなどの女の子らしい遊びとは無縁で、この少年のような生い立ちは、後に少年役を多く演じるキャリアに繋がっていく。

幼い頃から非常に活発で、周りから「札つきのやんちゃ」と言われるほど。まだよちよち歩きの時期にもかかわらず、朝家を出ると夜まで帰ってこないこともあった。かつて住んでいた東京都港区青山では、遊び場だった青山墓地で迷子になり、一晩中一人で歩き回って両親を大騒ぎさせた経験もある。また、人懐っこく誰にでもついていく性質から、誘拐されそうになったことも。明治神宮外苑でロケ見物をしていた際、親から離れて前に出ようとしたところ、見知らぬ男性に肩車をしてもらった。しかし、その男性がロケ隊から離れて歩き出したことに両親が気づき、必死に探し回る声を聞いて返事をしたことで事なきを得たという。もしそのまま誘拐されていたら、大金持ちの家のお嬢様になっていたかもしれない、と冗談交じりに語っている。

小学校時代は習い事を好んで行い、合唱団などに参加していたが、運動も大好きでオリンピック選手を目指していた時期もあった。中学頃からはピアノや声楽を習っていた影響で、漠然と音楽方面への進路を考えていたが、高校３年生の頃まで進学を志望していた。

キャリア形成と声優としての活躍

東京音楽学院のスクールメイツに所属した経験を経て、本格的な芸能の道へ。都心から西武線に乗り、落合駅で見かけた俳協養成所の募集看板がきっかけで興味を持ち、「お芝居をかじってみよう」「面白そう」と考え、明星高等学校卒業間もなく同養成所の1期生として入所した。同期にはよこざわけい子がいる。

多くの応募者の中から選ばれ、第1回俳協制作のミュージカルドラマ、北杜夫原作『船乗りクプクプの冒険』で主役のクプクプ少年に抜擢される。この主役抜擢には反対意見が出なかったという。当初は舞台女優として活動していたが、1977年のアニメ『若草のシャルロット』以降、声優業が中心となる。一時期は俳協ミュージカルの舞台やテレビドラマへの出演が多く、アニメの仕事に集中できない時期もあった。初レギュラーは1978年の『おれは鉄兵』小畑役。この時、主演の野沢雅子から細やかな指導を受け、その経験は非常に幸運だったとし、1981年当時は野沢を誰よりも尊敬していると語っている。初主演は1979年の『まんが猿飛佐助』の佐助役であった。以前は東京俳優生活協同組合に所属していた。

代表的な役柄

特に広く知られている役柄の一つに、1996年から1998年にかけて放送された『ゲゲゲの鬼太郎（第4作）』の鬼太郎がある。テレビアニメシリーズとしては3代目の鬼太郎を演じた。この役はオーディションで決定し、マネージャーは事務所としてどうしても松岡にやらせたいと熱意を示したという。過去作品はちらっと見た程度で、前の声優の演技に引っ張られず、自分ならではの鬼太郎像を作り上げたいと考えていた。2008年に公開された『劇場版 ゲゲゲの鬼太郎 日本爆裂!!』関連企画『ゲゲゲまつりだ!!五大鬼太郎』では、歴代の鬼太郎声優である野沢雅子（第1作・第2作）、戸田恵子（第3作）、高山みなみ（第5作）と共に第4期の鬼太郎を演じた。歴代キャストが集まることを長年願っていたため、企画の話を聞いた時には鳥肌が立ち、共演できたことに大きな喜びを感じたという。

その他の代表作としては、『魔動王グランゾート』の遥大地役が挙げられる。放送当時、甥と一緒に自身の出演する回をリアルタイムで見ていた際、甥から「おばちゃん、今日お仕事は？」と尋ねられたエピソードは微笑ましい。これは録音であることを説明しても、甥はあまり理解できていない様子だったという。『戦国魔神ゴーショーグン』の真田ケン太役や、『ONE PIECE』のアルビダ役なども印象深い役として知られている。

人物・特色

声種はアルト。声優としては、元気な少年から内向的で嫌味な少年まで、様々なタイプの少年役を演じ分けることに長けている。1981年のインタビューでは、声の仕事はほとんどが男の子役で、女の子役は少なかったと語っている。女の子役のオーディションを受けようとした際に「君はやらなくていい」と言われた経験もある。しかし、子供の頃の生い立ちから男の子のキャラクターの方が自然に入り込めるため演じやすいと感じている。女の子の集団は生理的に受け付けず、男の子の心理の方がよく理解できたという。一方で、声優として色っぽい女性役にも挑戦しており、幼い頃から短かった髪を初めて長く伸ばしたり、ジャズダンスや日本舞踊を通じて表現の幅を広げたりした。趣味・特技はジャズダンス、タップダンス、日本舞踊。家族構成として妹がいる。

アニメや吹き替え、舞台、ナレーションなど、多様なメディアでその独特の声質と確かな演技力をもって、今日まで多くのキャラクターを演じ続けている。

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