松平信定

松平信定：桜井松平家初代、波乱の生涯

松平信定（まつだいら のぶさだ）は、戦国時代の武将であり、三河松平氏の一族。松平長親の三男として生まれ、碧海郡桜井村（現在の愛知県安城市桜井）を拠点に、桜井松平家の初代当主となりました。

生涯

誕生から桜井松平家へ

15世紀末頃、松平長親の三男として誕生。幼名は与一と称しました。兄・信忠が安祥松平家の家督を継承するも、その統率力不足から一族の信望を得られず、父・長親は信定に家督を継がせようと期待したとされます。しかし、信定は叔父である松平親房の養子となり、三河国碧海郡桜井に桜井城を築いて居城としました。

清康との対立

信忠の隠居後、甥の清康が安祥松平家の家督を継ぎますが、信定は清康に従順とは言えませんでした。織田氏との縁を結び、清康の要請で品野城を攻略するも、次第に清康に対し不穏な動きを見せるようになります。宇利城攻めでは、清康の逆鱗に触れる行動を取り、牧野信成の吉田城攻め（下地合戦）でも清康を挑発するような言動があったと伝えられています。

森山崩れと岡崎城占拠

天文4年（1535年）、清康が家臣の阿部正豊に暗殺されると（森山崩れ）、信定は清康の遺児である竹千代（後の徳川家康）と対立。岡崎城を占拠し、竹千代を伊勢国へ追放しました。しかし、竹千代は今川氏の庇護を受け、勢力を盛り返します。信定は室城を攻めるも敗退。その後、岡崎城は広忠派の家臣によって奪還され、信定は広忠に帰順しました。

その後

帰順後も、信定は広忠と対立し、弟の義春とも不仲であったとされます。天文7年（1538年）に死去。長男の清定や孫の家次も広忠の嫡子である松平元康（徳川家康）と争いましたが、三河一向一揆以降は徳川氏に従属しました。

近年の研究

歴史学者の村岡幹生は、従来の信定像が史料によって歪められている可能性を指摘しています。

清康時代の安祥城主： 大永7年当時、信定が安祥城に入っていた可能性。
桜井松平家継承時期： 信定が桜井松平家を継承したのは、親房の死後である可能性。
森山崩れ： 清康と信定の対立ではなく、岡崎松平家と安祥松平家の家臣団の対立が原因であった可能性。

村岡説では、森山崩れは岡崎松平家臣団によるクーデターであり、信定は事態の収拾を図ったに過ぎないと解釈されています。また、従来の信定の狡猾なイメージは、広忠を正当化するための創作である可能性も指摘されています。

系譜

父：松平長親
母：不詳
正室：松平親房娘
* 子女：松平清定、他女子数名

桜井松平家のその後

桜井松平家は江戸時代に入ると各地に転封し、最終的には尼崎藩に定着しました。尼崎市には信定を祀る桜井神社が現存しています。

松平信定は、従来のイメージとは異なる側面を持つ、戦国時代の複雑な人物であったと言えるでしょう。

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