桜井松平家

桜井松平家：清和源氏から子爵家へ

桜井松平家は、清和源氏を称する松平氏の庶流に当たる武家・華族です。その起源は、安城松平家の松平長親の子、信定（もしくは三男）に遡ります。三河国碧海郡桜井（現在の愛知県安城市桜井町）を領したことから、桜井松平家と呼ばれるようになりました。近世には摂津国尼崎藩を治め、明治維新後には華族の子爵家に列せられました。十八松平の一つとして数えられています。

戦国時代の興亡

通説では、松平長親の子である信定を初代としていますが、桜井山菩提寺の過去帳には、長親の弟である松平親房が先に記されており、信定は養子として家督を継いだとする説もあります。大永7年（1527年）の桜井神社棟札にも親房の名があり、桜井がもともと親房の支配地であったことが示唆されています。

信定は、松平宗家の地位を望み、甥にあたる7代当主・松平清康と対立したと推測されます。森山崩れ（守山崩れ）で清康が横死すると、織田信秀の支援を受けて岡崎城を占拠、清康の嫡男である松平広忠を放逐しました。しかし、広忠を正統な跡目と考える家臣団の多数派の支持を得られず、今川氏の介入もあり岡崎城を放棄せざるを得ませんでした。宗家乗っ取りは失敗に終わります。この出来事の解釈には諸説あり、信定の行動を宗家簒奪ではなく、家臣団の反乱鎮圧と捉える見解もあります。

信定家はその後も松平宗家への敵対姿勢を変えず、信定の孫の代に至ってもその姿勢は変わらなかったとされます。今川義元の死後、独立を目指す松平元康（後の徳川家康）が三河一向一揆と対立した際に、吉良氏ら敵対勢力と結び、再び宗家転覆を企てましたが、失敗に終わりました。その後は宗家に服従することとなります。

江戸時代の桜井松平家

江戸時代初期には、武蔵松山藩、遠江浜松藩5万石に封じられますが、当主の短命や改易を経て、上総佐貫藩主家として再興しました。その後、駿河田中藩、遠江掛川藩、信濃飯山藩、遠江掛川藩と転封を重ね、最終的に摂津尼崎藩4万石で明治維新を迎えます。

明治以降

最後の尼崎藩主・忠興は明治元年（1868年）に松平から桜井に改姓しました。版籍奉還後、尼崎藩知事を務め、廃藩置県までその職に就きました。明治2年、華族制度成立とともに華族に列し、明治17年には子爵に叙せられました。3代子爵の桜井忠養の時代には、東京市目黒区上目黒に邸宅がありました。兵庫県尼崎市の桜井神社には、信定から忠興までの歴代藩主が祀られています。

分流とゆかりの地

桜井松平家当主・松平忠頼の三男・忠勝は、久松松平定勝の養子となり、後に徳川頼宣の家臣となりました。その家系は紀州藩高家となり、徳川家茂の生母である実成院の生家でもあります。

桜井家ゆかりの地のひとつ、東京さぬき倶楽部（旧江戸屋敷跡）は、東京都港区三田にあった邸宅跡で、戦後香川県に売却されましたが、老朽化や耐震性の問題から、2020年4月に閉館しました。

系譜

（系譜図は省略）

参考文献

浅見雅男『華族誕生 名誉と体面の明治』
小田部雄次『華族 近代日本貴族の虚像と実像』
華族大鑑刊行会『華族大鑑』
新田完三『内閣文庫蔵諸侯年表』

関連項目

松平氏
十八松平

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