松平定国

松平定国（まつだいら さだくに）

松平定国は、江戸時代中期から後期にかけて活躍した大名で、伊予国松山藩の第9代藩主です。彼は、江戸幕府第8代将軍・徳川吉宗の孫という高貴な血筋を持ち、田安徳川家の出身でありながら、松山藩主としてその生涯を刻みました。

生涯

宝暦7年（1757年）6月13日、定国は御三卿の一つである田安徳川家の初代当主・田安宗武の六男として誕生しました。幼名は辰丸と名付けられ、実母は山村氏出身の香詮院殿、後に近衛氏出身の宝蓮院殿が養母となりました。

明和5年（1768年）、伊予松山藩の8代藩主・松平定静の世嗣であった熊太郎が夭折したことを受け、定国は幕府の命により定静の養嗣子となります。安永元年（1772年）には、従四位下・中務大輔に叙任されました。安永8年（1779年）7月、養父である定静の死去に伴い、松山藩15万石を相続し、藩主となりました。同年9月には隠岐守に転任し、11月には溜間詰に任ぜられ、さらに侍従に昇進するなど、幕府内でも重要な役職を歴任しました。

松山藩主として在国中、天明4年（1784年）元旦の夜中、松山城天守に落雷が発生し、天守を含む本壇が焼失するという大火に見舞われました。定国は直ちに江戸へ急使を派遣し、遅参を願い出ると共に、松山城の再建を幕府に嘆願し、その許可を得ました。寛政6年（1794年）には光格天皇に拝謁し、その後、左近衛権少将に昇進するなど、その名声を高めていきました。

定国は、弟の松平定信とは元々不仲であったと伝えられています。天明7年（1787年）、定信が老中に就任すると、定国は定信の家臣を呼びつけ、その政治方針に異論を唱えました。さらに、尾張藩主の徳川宗睦らに、定信が政治的な失敗を犯した場合には退任させるべきであると主張し、そのためには自らも老中に就任したいという意思を示しました。これに対し、宗睦らは定国の性格を「気強成生質ニ而少々卒忽成ル処も御座候」（気が強く、少し軽率なところもある）と評しています。

文化元年（1804年）6月14日、定国は脚気により体調を崩したと嫡男の立丸（後の松平定則）から幕府に報告がありました。同日、立丸に家督を譲る旨の遺言を記し、6月16日、江戸の松山藩邸愛宕下上屋敷にて48歳で亡くなりました。実際には6月11日に亡くなっていたとされています。法号は瑞龍院殿故左近衛権少将前隠岐守従四位下源朝臣定誉戒雲慧空大居士。遺体は江戸三田済海寺に葬られ、遺髪は松山古町大林寺へ送られ、埋葬されました。

系譜

父：徳川宗武（1716年 - 1771年）
母：香詮院 - 山村氏
養母：近衛通子 - 御簾中近衛氏・宝蓮院殿
養父：松平定静（1729年 - 1779年）
正室：鉄姫（1761年 - 1780年） - 柔輭院殿、松平定静の養女、松平定喬の娘、安永9年（1780年）卒去
側室：満（中村氏）
長女：孝君（1784年 - 1786年、早世）
側室：鶴（村賀氏）
次女：艶君（1785年 - 1787年、早世）
次男：元之丞
側室：政（藤田氏）
三女：辰君（1791年 - ?） - 酒井忠順正室
次男：松平定則（1793年 - 1809年）
四男（流産）
側室：利嘉
四女：梶君（1793年 - 1795年、早世）
側室：千佐（林氏）
五女：叙君（1803年 - 1806年、早世）
五男：松平定通（1805年 - 1835年）
側室：喜代
長男：元之丞（1787年 - 1788年、早世）
養子
* 女子：波君（1791年 - ?） - 松平定諡の娘、堀田正民正室

松平定国は、その生涯において、藩主としての職務を全うし、松山藩の発展に尽力しました。また、徳川家の一員としての誇りを持ち、幕府の要職を歴任するなど、多岐にわたる活躍を見せました。

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