松平尹親

松平尹親の生涯とその業績

松平尹親（まつだいら ただちか）は、江戸時代中期の著名な幕府旗本であり、松平家の本宗家である岩津松平家の末裔です。通称は九郎左衛門であり、彼の生涯は幕府における地方行政や開発事業に多大な影響を与えました。

尹親は、父に松平喜六親雄、母に彦根藩士友松佐右衛門直利の娘を持ち、『寛政重修諸家譜』によると、松平家の一族である「岩津太郎」松平親長の子孫とされています。彼は甲府徳川家の徳川綱豊（後の家宣）に仕え、勘定役を務めていました。

幕臣への転身

尹親が幕臣に転身する契機は宝永元年（1704年）のことで、家宣が江戸城西の丸に入った際に、彼も勘定役として仕官し、廩米を100俵受け取ることができました。これに続く正徳元年（1711年）には廩米50俵が加増され、彼の地位は確立されていきました。

代官としての活動

正徳2年（1712年）には豊前、豊後、筑前の幕府領を巡検し、翌年には代官へと転任しました。代官としての彼の業績の一つに、下総国の飯沼の干拓があります。飯沼は多くの湖沼が集まる地区であり、干拓の問題は長らく課題として残されていました。

17世紀後半から構想されていた飯沼の干拓は、村々の意見が分かれ、新堀派と古堀派に分かれて争っていました。享保7年（1722年）に新田開発促進の方針が示されると、江戸町奉行に出願し、尹親が現地調査を行うこととなりました。享保8年（1723年）の調査では、井沢弥惣兵衛が派遣され、開発計画が立案されました。

尹親は同年に飯沼の干拓に関する協力を求め、有力者たちを集めて話し合いを行いました。実際の干拓事業は、彼が離任した後の享保10年（1725年）に始まり、地域の農業発展に寄与しました。

洪水対策と信濃国での役割

また、享保8年には洪水が頻発していた市野川の改修工事を進め、排水問題の解決を図りました。尹親は享保9年から享保19年（1734年）にかけて信濃国坂木代官を務め、様々な幕領の管理も行いました。この期間には、中野・飯島・平賀代官との協力や、遠江国の幕領の支配も担当しており、享保15年時点には12万3900石まで支配高を拡大しました。

最期とその後

尹親は享保20年（1735年）に73歳で亡くなり、浅草の松源寺に葬られました。彼の子孫は代々この寺を菩提寺とし、嫡男の親常は享保11年に先立ち、その後嫡孫の親名が家督を継ぎました。幕末期には、彼の子孫である松平太郎（正親）が陸軍奉行並として活躍しました。

尹親の施策は地域の農業発展や洪水対策に大いに貢献し、彼の業績は今に語り継がれています。

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