松平親次

松平親次（まつだいら ちかつぐ）

松平親次は、戦国時代の三河国（現在の愛知県東部）で活躍した武将であり、福釜松平家の2代目当主です。通称は三郎次郎、右京亮。特に「鑓三郎次郎」という異名で知られ、槍術に優れた勇猛な武将として名を馳せました。

生涯

親次は、三河国碧海郡福釜（現在の愛知県安城市福釜町）を拠点とする福釜松平家の松平親盛の子として生まれました。

幼い頃から松平清康に仕え、数々の戦で槍を手に勇猛果敢に戦いました。その武勇は父に劣らず、「鑓三郎次郎」と称えられたと伝えられています。親次が愛用した槍は名工・助宗の作であり、後世まで福釜松平家に大切に伝えられました。

享禄3年（1530年）、松平清康が熊谷氏が守る宇利城（現在の新城市中宇利）を攻めた際、親次は先陣を務めました。桜井松平家の松平信定（親次の叔父）と共に大手攻めの主将として出陣するにあたり、鎧の綿噛に「今日の戦に一歩も退くまじ」という誓文を記し、決死の覚悟で戦に臨んだと伝えられています。

宇利城を守る熊谷氏もまた屈強な武将であり、激しい攻防戦が繰り広げられました。熊谷勢の反撃により松平勢は一時敗走を余儀なくされましたが、親次はただ一人踏みとどまり、奮戦しました。しかし、衆寡敵せず、ついに討ち死にを遂げました。享年28歳。親次の忠義に感銘を受けた従士の天野忠俊、大浜源内、宮村平七・平八、鈴木主殿助、安藤助作、近藤治右衛門ら10余名も共に討死したと伝えられています。

一部資料では、宇利城で討死にした「松平右京」は親次ではなく、親次の父である松平親盛であるという説も存在します。また、宇利城攻めの時期についても諸説あり、研究者の間でも見解が分かれています。

安城市の解説では、文亀3年（1503年）に生まれ享禄3年（1530年）に討死したのは父の親盛であるとしています。『安城市史』では、親次の生没年を大永元年（1521年）生まれ、天正3年（1575年）没としており、親次は13歳で初陣を迎えたと記されています。

福釜松平家の菩提寺である宝泉院には、親次を含む福釜松平家初代から三代までの肖像画が所蔵されています。親次の肖像画は槍を手に持ち、「鑓三郎次郎」の名にふさわしい勇壮な姿で描かれています。この肖像画は安城市指定の文化財となっています。

系譜

父：松平親盛
妻：久松肥前守定俊の娘
子：
松平親俊
上田元秀（上田元次の養子）
松平盛次（親盛の養子）

親次の血筋は、息子たちによって受け継がれました。長男の親俊は福釜松平家を継ぎ、次男の元秀は上田家の養子となり武将として活躍しました。三男の盛次は出家と還俗を経験するなど、波乱の生涯を送ったようです。

松平親次は、勇猛な武将としてだけでなく、主君への忠義を尽くした人物として、後世に語り継がれています。

もう一度検索