松平頼之

松平頼之：激動の時代を生きた若き藩主

松平頼之（まつだいら よりゆき）は、江戸時代末期から明治時代初期にかけて生きた人物で、陸奥国守山藩（のち常陸国松川藩）の最後の藩主です。彼は、第15代将軍・徳川慶喜の異母弟という特別な立場にありました。

生い立ちと藩主就任

安政5年（1858年）に水戸藩主・徳川斉昭の二十二男として生まれた頼之は、幼名を廿二麿（にじゅうにまろ）と名付けられました。その後、元治元年（1864年）に守山藩主・松平頼升の養子となり、昭鄰（あきちか）と改名します。慶応4年（1868年）には、養父の病弱を理由に、わずか11歳で藩政を代行することになりました。奥州の戦乱後、領地巡見のために東京を発ち、陸奥国守山へ向かいます。

版籍奉還と松川藩への改称

明治2年（1869年）に版籍奉還が行われ、江戸時代には江戸に詰めていた藩主も領地へ帰ることになりました。しかし、守山は政情不安で住居もなかったため、頼之は常陸国松川への居住を願い出て許可されます。同年8月には家督を相続し、守山藩知事となりました。その後、従五位に叙せられます。

明治3年（1870年）には、窮民救済のために領内を巡視し、同年12月には藩名を松川藩へ改称することを願い出て認められます。翌明治4年（1871年）には新藩印が与えられましたが、直後に藩庁などが焼失するという災難に見舞われます。その後、東京での学問修業を願い出て許可され、芳野金陵のもとで学びました。

廃藩置県とその後

明治4年（1871年）7月14日、廃藩置県が断行され、松川藩は松川県となります。頼之は県知事に任命され、子爵となりました。しかし、明治5年（1872年）には養父・頼升が死去し、翌明治6年（1873年）には頼之自身も16歳という若さで亡くなりました。頼之の死後、家督は実兄である松平喜徳が継承しました。

参考文献

大洗町史編さん委員会 編『大洗町史』大洗町〈通史編〉、1986年3月31日
コトバンク - 松平頼之

松平頼之は、短い生涯の中で、藩主として、そして県知事として、時代の変化に翻弄されながらも懸命に生きた人物でした。

もう一度検索