松戸宿

松戸宿

松戸宿は、水戸街道の千住宿から2つ目に位置する宿場町で、現在の千葉県松戸市松戸・本町一帯にあたります。江戸川に面しており、対岸には金町松戸関所が設けられていました。江戸時代には、江戸川に橋はなく、渡船が利用されていました。松戸側の渡船場跡付近には、天領を示す御料傍示杭が建てられ、そこが松戸宿の江戸側の端となっていました。

宿場町は南北に約1キロほどの範囲に広がり、物資の集積地としても栄え、数百軒の家々が立ち並ぶ大規模な集落を形成していました。市街地を横切って流れる坂川は、運河としても利用されていました。

歴史

徳川家斉の鹿狩り

寛政7年（1795年）3月5日、江戸幕府11代将軍徳川家斉が松戸宿周辺で大規模な鹿狩りを実施しました。この鹿狩りには、家斉の家臣団である諸大名や旗本約9800人に加え、下総国をはじめとする近隣諸国から集められた約10万人の勢子が動員されました。

勢子は広範囲に鹿を追い込み、東は銚子、南は安房国境、北は取手や布川、そして西の松戸宿まで至りました。家斉は当日午前6時に松戸宿に入り、小富士山の山頂から狩りの様子を観覧しました。

この鹿狩りでは、鹿96頭、猪13頭、兎2匹、雉1羽、狸3頭、狐3頭が捕獲されました。注目すべきは、鹿のうち53頭は百姓が狩ったものであったことです。捕獲された動物は、肉が食用に、毛皮や角が武具などの材料に利用され、余剰分は売却されたと考えられます。また、生け捕りにされた12頭の鹿は、当時の保存技術が未発達だったため、長期保存のための飼育目的であったと推測されます。

当時、仏教の殺生戒や神道の触穢の影響で獣肉食は忌避される傾向にありましたが、山村では貴重な食料源でした。徳川将軍家の正月三が日のお節料理には「兎の羹」が含まれており、幕府の肉食禁止令にも関わらず、兎肉が食されていました。これは、兎の長い耳を鳥の翼に見立て、跳躍力を飛翔と解釈することで、兎を鳥と四足動物の中間とみなす解釈があったためです。

周辺

松戸宿の周辺には、以下の寺社や旧跡があります。

松戸神社: 1626年創立。旧称は御嶽大権現。
宝光院: 千葉周作の父親の墓がある。
善照寺
西蓮寺
松龍寺
松戸本陣

隣の宿

水戸街道における松戸宿の隣の宿は以下の通りです。

新宿 ([[水戸街道)]] - 松戸宿
松戸宿 - 小金宿

新宿から松戸宿までは約7キロ、松戸宿から小金宿までは約7キロの距離でした。松戸宿と小金宿の間には、万満寺の門前町であった馬橋があり、間の宿としての役割も担っていました。

脚注

参考文献:

赤田光男『ウサギの日本文化史』（初版）世界思想社〈SEKAISHISO SEMINAR〉、1997年。

関連文献:

原田伴彦、朝倉治彦 編「浮世の有様 4 - 3.寛政七卯年御鹿狩御役人附」『日本庶民生活史料集成』（第1版）三一書房〈第11巻 世相 1〉、1970年。

関連項目

* 松戸宿坂川献灯まつり

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