松本幸四郎 (7代目)

七代目 松本 幸四郎

七代目松本幸四郎は、1870年に伊勢国で生まれ、1949年に逝去した日本の歌舞伎役者である。本名は藤間金太郎で、名門藤間流の日本舞踊家元としても知られる。舞台芸術において数々の伝説的な役を演じ、その影響を次世代の役者にも与えるなど、恵まれた才能で歌舞伎界を牽引した。

来歴

松本幸四郎は出生時から運命に導かれる。家業で生活を支えつつも、3歳で藤間流の家元に養子として迎えられ、藤間金太郎としての人生を開始した。1880年には九代目市川團十郎の門弟となり、市川金太郎を名乗って初舞台を踏む。

1889年には四代目市川染五郎を襲名し、その後も多くの名演を重ねながら、1903年には八代目市川高麗蔵を襲名。1911年には七代目松本幸四郎としての活動を開始し、以降帝国劇場での活躍が続く。

芸風

その容姿と立ち振る舞いに裏打ちされた堂々たる演技は、特に時代物や荒事で際立っていた。また、舞踊の家元としても有名であり、歌舞伎の奥深さを習得した秀逸な演技で観客を魅了した。特に『勧進帳』の弁慶役は、生涯において約1600回も演じられ、師である團十郎以後の第一人者としても評価されている。

岡鬼太郎からの辛口な劇評「風貌音声の堂々たる、随一」と評されたように、彼の存在感はまさに金城鉄壁であった。その他、数々の演目でも多彩な役を演じた。音楽劇や翻訳劇にも挑戦し、歌舞伎と西洋文化の融合に取り組み、次男や三男にその精神が受け継がれる。

人物と人間性

彼の人柄は非常に温厚で、その演芸に対する真摯な姿勢は多くの人に愛された。彼は「どんな役でも快く出る」という姿勢を持ち、その言葉からも彼の人間性が感じられる。生真面目で辛抱強かったが、初期の頃は俊才として注目を浴びることは少なかった。

また、体を張った演技でも知られ、特に『茨木』の舞台では幕切れの見得において心筋梗塞を起こすほどの情熱を注いだ。果たして、彼は若い頃から役者としての成長を遂げていった。

家族と子孫

彼の影響を受けた家族には、十一代目市川團十郎や初代松本白鸚、さらに二代目尾上松緑など、著名な役者が揃っている。子孫たちは歌舞伎の世界で活躍し続け、彼の功績を引き継いでいる。合計で多くの孫や曾孫が、歌舞伎界で重要な役を担っている。

最後の日々

晩年も舞台に積極的に出演する姿勢を崩さなかったが、1948年12月の新橋演舞場での役が最後になった。1949年1月27日に逝去。彼は亡くなる日まで、振付を弟子に教え続けるなど、その情熱は衰えることがなかった。彼の存在は、歌舞伎界において久しい脈々たる影響を残している。

もう一度検索