松翁 (行司)

松翁（しょうおう）についての詳細

松翁は、相撲界において行司に与えられる名誉の称号または隠居号の一つであり、歴史的な背景を有する特別な地位を担っています。この名号は、立行司に相当する力士の横綱と同等と見なされることもあります。もともと年寄名跡の一つであり、その尊号としての松翁が公式に認められたのは、20代庄之助ただ一人です。

名跡としての松翁の歴史

松翁の名跡は、天保6年（1835年）に始まります。当時、前行司9代庄之助は、後に11代庄之助となる6代庄太郎に名跡を譲るために隠居しましたが、予期しないトラブルが発生し、庄太郎の実父である8代庄之助が12年ぶりに現役に復帰する事態となりました。その結果、彼の名前は「喜左衛門再勤 木村庄之助」として番付に記載されました。

翌年、9代庄之助が復帰すると、8代庄之助は「木村松翁」と名乗り、庄之助の上位に付けられたのです。しかし、9代庄之助が現役のまま亡くなると、庄太郎が11代庄之助を名乗ることになります。単に名跡が複雑化しただけでなく、後世において「松翁は立行司よりも上位の存在」と誤解される要因にもなりました。専門家の根間弘海氏によれば、松翁は栄誉を称える名ではなく、二人の木村庄之助を区別するための名称に過ぎないとのことです。

8代庄之助の実子である11代庄之助も「松翁」を名乗っていた可能性があり、実際に両者の戒名にも「松翁」の字が含まれています。また、13代庄之助以降は、引退後に年寄・木村松翁として名乗ったり、現役のまま年寄として経験を積んだりしました。この時期には隠居行司制度の廃止や年寄定数制度の導入もあり、具体的な時期は不明ですが、明治30年代には「年寄名称としての木村松翁」は廃止されたと考えられています。

尊号としての松翁

名誉の尊号としての松翁は、20代庄之助が最初に取得したもので、彼はその卓越した裁きや土俵での風格により、正式に松翁の名乗りを許可されました。この際には、横綱免許と同様に吉田司家からの裁可が必要でした。その結果、番付にも「松翁 木村庄之助」と記載されたのです。

後の22代庄之助も、停年直前に松翁の名乗りを求めたものの、相撲協会内に反対意見が多く、名乗りには至りませんでした。近年、28代庄之助が松翁の名を名乗らなかったことに疑問を持つファンもいますが、20代庄之助が吉田司家から免許を受けた事実を考慮すると、特別な名誉が与えられることの重要性が浮き彫りになります。

戦後、横綱推挙の権限は日本相撲協会に委譲されましたが、松翁免許に関しては曖昧な状況が続いています。これには、日本相撲協会と吉田司家の関係が影響している可能性が高く、今後新たな松翁が誕生するのは難しいかもしれません。

松翁の名跡と尊号は、相撲界における特別な藤を示すものであり、その背景を理解することは、相撲の歴史を知る上で非常に重要です。名号は年寄名の変遷とともに進化し続けており、松翁は相撲界において独自の存在感を放つ名称として今なお記憶され続けています。

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