松葉家奴・松葉家喜久奴

松葉家奴・松葉家喜久奴

松葉家奴（まつばや やっこ）と松葉家喜久奴（まつばや きくやっこ）は、戦前から戦後にかけて活躍した日本の漫才コンビです。特に戦後は戎橋松竹を中心に活動し、徐々に松竹芸能の舞台を経て吉本興業にも登場しました。彼らは漫才の枠を超えて、様々な芸を持ち味にしたことで、多くのファンに愛されました。さらに、彼らは上方演芸の殿堂入りも果たしています。

メンバーについて

松葉家奴

松葉家奴は、1896年に生まれ、本名は堀井覚太郎です。京都の呉服屋に生まれ、早くから芸事に夢中になりました。彼は特に師匠を持たないまま芸界に入ったため、軽口や踊り、さらには新派などさまざまな芸を習得した後、漫才に挑戦しました。相方の変遷があり、当初は横山エンタツ、林田十郎、荒川歌江、笑福亭鶴八などと組みました。1939年には新興キネマ演芸部に引き抜かれ、初めての妻である吉野喜蝶とコンビを組みました。この時期、洋服を着用し、喜蝶の三味線に合った音曲漫才を行っていました。

戦後は初代の喜久奴とコンビを組み、1951年頃からは浜お竜とも組むことになりましたが、1952年以降は二代目の喜久奴と再びコンビを結成しました。晩年には再度二代目喜久奴とのコンビ活動を復活させるなど、数々の変遷を経て活躍を続けました。特に、黒羽織に赤い裏地を持つという独特な衣装が彼のトレードマークとなりました。

彼の得意としたネタの一つが「魚釣り」です。これは相方の三味線に合わせて手拭いや扇子などの小道具を使い、魚釣りを演じるパントマイムです。途中で足袋や着物に釣り針を絡めるユーモラスな演出があり、緻密な演技で観客を楽しませました。他にも「珍芸・金色夜叉」など、数々の芸に秀でていました。

松葉家喜久奴

松葉家喜久奴（二代目）は1905年に生まれ、本名は信田シゲです。東京の深川に生まれ、14歳で日本舞踊に入門し、勝代を名乗ることになります。22歳で結婚し、その後生活の中で女道楽に転向しました。1952年に松葉家奴の夫人で二代目喜久奴として彼とコンビを結成しました。彼女は三味線を担当し、演芸の中で奴と一体化したパフォーマンスを披露しました。特に「魚釣り」では、奴を補完する存在として更なる魅力を発揮しました。

エピソード

松葉家奴はその独特な性格から「きちがい奴」とも称され、奇人とされることもありました。その奇行やエピソードは多岐にわたり、一冊の本としてまとめられるほどです。上岡龍太郎などが彼の奇行をネタにすることもありました。彼は同世代の「奴」たちとよく比較され、桂米朝も彼を題材にした独演会を開いたことがあります。しかし、彼のコンビは夫婦喧嘩が絶えず、別れたというエピソードもあります。

ある時、巡業中に他の芸人に「魚釣り」を披露されてしまい、怒った松葉家奴は後日道で待ち伏せをしたこともありました。これにより、彼が持つユーモアや情熱の一片を窺い知ることができます。奇妙なエピソードとともに、彼の芸は今でも人々の記憶に残る存在です。松葉家奴、松葉家喜久奴の生涯は、漫才の歴史において特に輝かしい瞬間を提供したと言えるでしょう。

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