松館しぼり大根

松館しぼり大根（まつだてしぼりだいこん）

概要

松館しぼり大根は、秋田県鹿角市八幡平字松館地域で栽培されているアブラナ科アブラナ属ツケナの在来種で、この地域に古くから伝わる伝統野菜です。2018年4月9日には、その地域性と品質の高さが認められ、農林水産省の「地理的表示（GI）保護制度」に登録されました。

特徴

松館しぼり大根は、一般的な大根に比べて短く、円筒形に近い形状をしています。長さは15cmから20cm程度で、根の重さは400〜500グラムほどです。葉は板状で、草丈は50cmから1m程度まで成長します。宮城県加美町の地方品種である小瀬菜と形態特性が類似している点が特徴です。

栽培は、8月上旬に種をまき、初霜が降りる頃に収穫が行われます。肉質は非常に固く、水分が少ないため、長期保存に適しています。

秋田県農業試験場の調査によると、松館しぼり大根の辛味成分は、一般的な青首大根の平均3.7倍にも達することが報告されています。この強い辛味は、松館地域の特有の立地条件と腐植質の多い土壌に大きく起因すると考えられており、他の地域で栽培しても同様の辛味や風味を再現することは難しいとされています。一方で、ショ糖の含有量が他の辛味大根よりも高いため、辛味の中に甘みを感じる独特の風味が生まれます。

食べ方

松館しぼり大根は、皮を剥かずにそのままおろして、布で絞った汁を薬味として利用するのが一般的な食べ方です。絞り汁は、おろしてから5～7分程度経過した頃に最も辛味が強くなると言われています。

歴史と背景

松館しぼり大根は、その地域固有の気候風土と土壌によって育まれてきた伝統野菜であり、地域の食文化に深く根ざしています。地理的表示保護制度に登録されたことで、その価値が広く認識されるようになり、地域ブランドとしての保護と振興が図られています。

参考資料

鹿角市『鹿角市史』1982～1997
タキイ種苗（株）出版部 編『都道府県別 地方野菜大全』（2版）農山漁村文化協会、2003年。ISBN 9784540021565。
椿信一「秋田県におけるダイコン地方品種の育成と、それに関わる諸形質の遺伝・育種学的研究」（PDF）『秋田県農業試験場研究報告』第56号、秋田県農業試験場、2017年、1-79頁、ISSN 2433-2348, NAID 40021489890。
松館しぼり大根（登録番号第60号）:登録の公示・登録産品紹介 - 農林水産省[[地理的表示]保護制度登録産品](https://www.maff.go.jp/j/shokusan/gi_act/register/60.html)

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