林昌寺 (恵那市)

醫王山 林昌寺

醫王山 林昌寺（いおうざん りんしょうじ）は、岐阜県恵那市山岡町久保原に位置する曹洞宗の寺院です。醫王山を山号とし、恵那三十三観音霊場二十二番札所、中部四十九薬師霊場二十七番札所として、多くの人々の信仰を集めています。

歴史

寺の伝承によれば、鎌倉時代末期の文保元年（1317年）に、丹波の僧である草伯が、行基作とされる薬師如来像を携えて久保原村に訪れたことが始まりとされています。村の住民である與作が草伯に深く帰依し、草庵を建てて奉仕したことが、林昌寺の起源と伝えられています。

その後、村人たちの尽力により、天台宗の寺院として醫王山 瑠璃光寺が建立されました。この瑠璃光寺の本尊となったのが、草伯が持ってきた薬師如来像でした。しかし、天文年間（1532年～1555年）に兵火により、瑠璃光寺の七堂伽藍は焼失してしまいます。幸いにも、本尊の薬師如来像は古野川の岩窟に隠され無事でした。また、焼け残った正観音と阿弥陀仏は、中西城（久保原城）主の遠山左京之進の母である実松宗貞禅尼によって、瑠璃光寺の恵月坊の跡地に建てられた恵月庵で祀られることとなりました。

しかし、天正2年（1574年）には、武田勝頼の東濃侵攻により、恵月庵も兵火に見舞われ焼失してしまいました。

その後、寛永2年（1625年）に、馬場山田にある盛久寺三世の龍山長雲が、瑠璃光寺の跡地に寺を再建し、恵月庵に祀られていた薬師如来像を本尊として迎え、寺号を醫王山 林松寺と改めました。この時、龍山長雲の法嗣である舜山天暁が初代住持となりました。

さらに時代が進み、盛久寺十二世の自回厳道は、寺を法地に昇格させることを志し、久保原村の豪農である熊谷善兵衛らの協力を得て、天明2年（1782年）に大殿を再建し、寺を法地へと昇格させました。自回厳道自身が法地の第一世となりましたが、林松寺には在寺せず、弟子の瑤山大瑩を住持としました。

瑤山大瑩は、堂宇や仏具を整え、天明8年（1788年）には、口径一尺五寸八分の梵鐘を鋳造し、寺の完成をみました。当時の堂宇は以下の通りです。

本堂：縦六間半、横五間半、茅葺
庫裡：縦十間、横四間半、茅葺
隠寮：縦五間、横三間半、茅葺
鐘楼門：縦二間、横一間半、茅葺
物置：縦二間半、横二間、茅葺
長屋：縦四間半、横二間、茅葺
小屋：縦二間半、横一間半、茅葺

寺号については、当初は林松寺と称し、時には林昌寺とも表記されていましたが、明治以降に林昌寺に統一されました。

林昌寺の周辺には、かつて多くの五輪塔や宝篋印塔が存在していましたが、現在では寺の入口右側にある爪切地蔵の周辺に集められています。原形を留めているものは少ないものの、20数基分が残っており、これらは瑠璃光寺の僧や中西城の関係者の墓と考えられています。

文化財

林昌寺には、寺の創建時に建てられた鐘楼門と、鎌倉時代に作られた薬師如来座像が、恵那市の文化財として指定されています。これらの文化財は、寺の歴史と文化を今に伝える貴重なものです。

醫王山林昌禅寺由来記による瑠璃光寺

林昌寺の歴史を語る上で欠かせないのが、「醫王山林昌禅寺由来記」です。この書物には、瑠璃光寺の歴史や、林昌寺が再興されるまでの経緯が詳しく記されています。この記録は、寺の歴史を研究する上で重要な資料となっています。

参考文献

『山岡町史　通史編』　山岡町誌編纂委員会　1989年
『山岡町史　史料編　下巻』　山岡町史編纂委員会　昭和53年
『旗本明知遠山氏 明知御陣屋 乾』　熊谷博幸編集・発行　平成22年
『恵那郡史』　恵那郡教育会　1926年
『中部四十九薬師巡礼』　中部四十九薬師霊場会　冨永航平　朱鷺書房　1999年

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