林裕

林裕（はやし ゆたか）

林裕（1922年7月7日 - 1986年10月19日）は、日本の囲碁界において評論家、編集者、観戦記者、研究家として幅広い足跡を残した人物です。日本棋院に所属後、その才能を執筆活動に専念させました。

生涯

東京渋谷で生まれた林裕は、姉が棋士の福原義虎七段と結婚したことが縁となり、1941年頃から日本棋院に出入りするようになりました。1943年には学徒動員により応召され、戦時下を経験しました。

戦後、1946年に中央大学法学部を卒業。1948年には、村島誼紀らが創刊した『碁の新聞』の編集を任されます（同紙は3号で終刊）。その後、『棋道』の編集を手伝うようになり、1950年に日本棋院事務局に入局。『棋道』や『囲碁クラブ』といった雑誌、そして数々の棋書の編集に携わりました。編集部長、中央会館事務局長といった要職を歴任し、1968年には「囲碁史展」（日本橋東急百貨店）を主導するなど、囲碁文化の普及に尽力しました。1969年に日本棋院を退職し、以後は執筆と研究に専念します。

1965年には、梶原武雄を団長とする囲碁使節団の副団長として中国を訪問し、国際交流にも貢献しました。

また、1950年から1978年までの長きにわたり、『共同通信』『東京新聞』『毎日新聞』で観戦記を執筆し、囲碁の魅力を広く伝えました。退職後は、著作と研究に専念し、『日本囲碁大系』の編纂など、囲碁史研究に大きな足跡を残しました。

1983年には、長年の囲碁界への貢献が認められ、大倉賞を受賞。全日本学生囲碁連盟理事、関東学生囲碁連盟常務理事も務めるなど、学生囲碁の発展にも力を注ぎました。

主な著作

林裕は、数多くの著作や編著を通じて、囲碁の普及と研究に貢献しました。以下に代表的な著作を挙げます。

『新囲碁全書 上達の手びき』編著（金園社、1962年）
『囲碁百科辞典』（金園社、1965年）
『囲碁入門』（鶴書房、1967年）
『囲碁風雲録 昭和の大勝負』（人物往来社、1968年）
『囲碁風雲録　上下』（講談社、1984年）
『現代囲碁大系別巻 現代囲碁史概説・現代囲碁史年表』（講談社、1984年）
『日本囲碁大系』全18巻（総編集）（筑摩書房、1975-76年）
『本因坊秀栄全集』（歴史図書社、1977年）
林元美『爛柯堂棋話 昔の碁打ちの物語』1-2 校注（平凡社〈東洋文庫〉、1978年）
林応龍『適情録』呉清源解説、貝塚茂樹、宇野精一、松丸道雄、景嘉共編 全20巻+解説2冊 （組本社、1980年）
『現代囲碁大系』全48巻（編集主幹）（講談社、1980-84年）

また、『棋道』誌上では、「大正囲碁史」（1974年）、「明治囲碁史」（1978-79年）、「林裕の囲碁ウンチク講義録」（1986年）といった連載企画を担当し、囲碁ファンに貴重な情報を提供しました。

筑摩書房が経営危機に陥った際、林が編集した『日本囲碁大系』の出版が原因であるという噂が流れたという逸話も残っています。

参考文献

「林裕の囲碁ウンチク講義録」（『棋道』1986年1-12月号）
* デジタル日本人名大事典『林裕』 - コトバンク

林裕は、その多岐にわたる活動を通じて、日本の囲碁界に多大な貢献をした人物として、その名が深く刻まれています。

もう一度検索