果物綱 (ルーベンス)

『果物綱』（独: Die Früchtegirlande、英: Garland of Fruit）は、フランドルのバロックを代表する画家ピーテル・パウル・ルーベンスが、1616年から1617年頃に油彩で描いた作品です。この絵画は、ルーベンスの卓越した技術と、他の画家との協力によって生み出されました。果物の描写はフランス・スナイデルスが担当し、風景はヤン・ウィルデンスが手掛けています。この作品は、1806年にデュッセルドルフ絵画館から移され、現在はミュンヘンのアルテ・ピナコテークに所蔵されています。

ルーベンスは、1610年代後半から花綱や果物籠をモチーフにした作品をスナイデルスと共同で制作しており、本作もその一つです。他の共同制作には、『ケレスの像』（1615年頃、エルミタージュ美術館）、『幼児キリストと洗礼者聖ヨハネ、二人の天使』（1615-1620年頃、美術史美術館）、『二人のプットのいる果物と花の飾り』（1620-1630年、プラド美術館）などがあります。

『果物綱』には、スナイデルスが得意とした豊潤な果物の描写が際立っています。それは、先行して制作された『ケレスの像』にも見られる特徴です。また、背景の風景はヤン・ウィルデンスによって描かれ、ルーベンスの『キモンとエフィゲニア』と同様のスタイルが用いられています。しかし、絵画の中心的な要素である7人のプットはルーベンス自身が描き、彼らは画面を横切るように配置されています。特に、前景で果物綱を掲げている2人のプットは、互いに鏡像のように非常に似通っています。残りの5人はその後ろで、重そうな綱を運ぶのを手伝おうと懸命に奮闘している様子が描かれています。

ルーベンスは、プットたちを非常に温かく、生き生きと描写しています。彼らの表現には、ルーベンスが持っていた古代美術に関する深い知識が反映されています。果物綱とともに、人物をフリーズのように配置する手法は、古代の石棺のレリーフに由来しています。また、この作品はやや低い視点から描かれており、これは高い場所、おそらくはドアの上に設置されることを想定して制作されたと考えられます。

この作品は、ルーベンスの創造性と、他の画家たちの才能が見事に融合した、バロック美術の傑作と言えるでしょう。その鮮やかな色彩と、生き生きとした描写は、見る者を魅了します。


参考画像
ルーベンス、スナイデルス『ケレスの像』（1615年ごろ）、エルミタージュ美術館、サンクトペテルブルク
ルーベンス、スナイデルス『幼児キリストと洗礼者聖ヨハネ、二人の天使』（1615-1620年ごろ）、美術史美術館、ウィーン
ルーベンス (工房)、スナイデルス、ヤン・ブリューゲル (父)『二人のプットのいる果物と花の飾り』（1620-1630年ごろ）、プラド美術館、マドリード



参考文献
『ルーベンス 栄光のアントワープ工房と原点のイタリア』、Bunkamuraザ・ミュージアム、毎日新聞社、TBS、2013年刊行

外部リンク
アルテ・ピナコテーク公式サイト、ピーテル・パウル・ルーベンス、フランス・スナイデルス、ヤン・ウィルデンス『果物綱』 (英語)

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