柳幸典

柳幸典は、1959年福岡県に生まれ、武蔵野[[美術大学]]大学院で美術を学びました。その後、アメリカのイェール大学大学院で彫刻を専攻し、ビト・アコンチやフランク・ゲーリーらに師事しました。彼の作品は、美術のシステムの外にある〈移動〉をテーマに、多様な素材や手法を用いて制作されています。

1980年代から、アリを使った作品やフンコロガシのように土の玉を転がす作品を発表し、美術界で注目を集めました。1990年には、砂絵の万国旗をアリが壊していく作品『ザ・ワールドフラッグ・アント・ファーム』が、アメリカの美術雑誌『Art in America』の表紙を飾るなど、国際的な評価を得ました。

1990年代には、日本のポップアイコンをモチーフにした『ヒノマル・シリーズ』を発表し、日本の社会、政治、経済を分析し、国家や民族のイデオロギーの問題を提起しました。このシリーズは、同世代の作家に大きな影響を与えました。また、ベネッセアートサイト[[直島]]での滞在をきっかけに、瀬戸内海の離島での活動を開始し、犬島プロジェクトを構想しました。

犬島プロジェクトは、明治時代の銅の精錬所跡をアートと自然エネルギーで再生する壮大な計画で、13年の歳月をかけて2008年に完成しました。このプロジェクトは、後の瀬戸内国際芸術祭の先駆けとなりました。柳は、犬島でのプロジェクトの完成後、広島県尾道市の離島である百島を拠点に、アートセンター「ART BASE 百島」を立ち上げ、地域に根差したアート活動を展開しています。

柳の作品は、特定の場所や歴史と深く結びついている点が特徴です。例えば、サンフランシスコのアルカトラズ島を舞台にしたプロジェクトでは、第二次世界大戦中の日系アメリカ人の歴史に触れ、ニューヨークのストアフロント・フォー・アート・アンド・アーキテクチャーでの個展では、湾岸戦争直前の社会状況を反映させた作品を発表しました。これらの作品は、歴史や社会に対する鋭い洞察を示しており、観る者に深い問いを投げかけます。

柳の活動は、美術館での展示にとどまらず、地域社会との連携や、自然エネルギーを活用した持続可能な社会づくりにも貢献しています。彼は、アートを通じて社会を変える可能性を追求しており、その活動は多くの人々に影響を与えています。

2016年には、横浜のBankART1929で30年の作家活動を回顧する大規模な個展を開催し、福島第一原子力発電所事故を題材にした新作『Project God-zilla』を発表しました。この作品は、毎日新聞と読売新聞で年間ベスト展覧会に選ばれるなど、大きな反響を呼びました。2025年には、韓国の安佐島に柳の美術館「FLOATING MUSEUM」が開館予定で、彼の活動はさらに国際的な広がりを見せています。

柳の作品は、単なる美術作品としてだけでなく、社会に対する問いかけや、未来への希望を示すものであり、その多岐にわたる活動は、現代アートの可能性を広げ続けています。

主なプロジェクト

犬島アートプロジェクト「精錬所」：犬島の精錬所遺構をアートと自然エネルギーで再生した美術館。
Field Work on Alcatraz：サンフランシスコのアルカトラズ島を舞台にしたサイトスペシフィック・インスタレーション。
ART BASE 百島：尾道市の百島にある廃校を改修したアートセンター。
安佐島プロジェクト：韓国の安佐島に建設中の美術館「FLOATING MUSEUM」を中心とした地域全体をアートディレクションするプロジェクト。

主な展覧会

柳幸典は、国内外の美術館で多数の個展、グループ展に参加しています。主なものとして、以下が挙げられます。

個展
ヒルサイドギャラリー（東京）
ストアフロント・アート・アンド・アーキテクチャー（ニューヨーク）
LACE ロサンゼルス・コンテンポラリー・エキジビションズ（ロサンゼルス）
広島市[[現代[[美術]]館]]（広島）
BankART Studio NYK（神奈川）
Blum & Poe Tokyo（東京）
企画展
第45回ベニスビエンナーレ（ベニス）
ホイットニー美術館（ニューヨーク）
テートモダン（ロンドン）
瀬戸内国際芸術祭（岡山）
ヨコハマトリエンナーレ（横浜）
シドニー・ビエンナーレ（シドニー）

代表作

『バンザイ・コーナー』（1991年）
『ヒノマル・イルミネーション』（1992年）
『クリサンスマム・カーペット』（1994年）
『犬島精錬所美術館』（2008年）
* 『プロジェクト・ゴジラ』（2016年)

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