柳溥

柳溥（りゅう ふ）は、生年不詳ながら、明代の軍人としてその名を歴史に刻んだ人物です。彼の生涯は、軍事的な功績と、その統治における課題が複雑に絡み合ったものでした。

柳溥は、安慶府懐寧県を本貫とし、父である柳升の跡を継ぎ、宣徳10年（1435年）に安遠侯の爵位を嗣ぎました。その後、正統元年（1436年）には中府を管掌するなど、早くから重要な役職を任されています。

治水事業にも携わり、通済河の決壊時には、太監の沐敬や尚書の李友直と共に、兵5万と民夫1万を動員して堤防の修築にあたりました。このことからも、柳溥が軍事だけでなく、民生にも関わっていたことがうかがえます。

正統3年（1438年）には、征蛮将軍・総兵官として広西に出向しました。柳溥は清廉で慎重な人物として知られていましたが、一方で、法令制度を厳守することができず、その統治は緩慢なものでした。その結果、瑤族や僮族などの少数民族が反乱を起こし、広西一帯は混乱に陥りました。柳溥は反乱の鎮圧に尽力し、大藤峡の反乱の首領を斬ったり、柳州・思恩府の少数民族の寨を破ったりするなどの戦果を挙げましたが、広西における反乱は依然として頻発していました。正統10年（1445年）には、慶遠の少数民族の反乱を鎮圧しています。

正統14年（1449年）には、神機営を管掌し、石亨や楊洪と共に京営の兵を練兵しました。これは、柳溥が軍事面で重要な役割を担っていたことを示すものです。景泰5年（1454年）には、再び広西に出向して駐屯し、天順元年（1457年）には、広西の少数民族の反乱を撃破しました。その後、北京に召還され、右府を管掌し、宣府・大同を守備することになりました。太傅にまで累進し、その功績は高く評価されました。

しかし、柳溥の軍事的なキャリアは、常に成功に彩られていたわけではありません。天順元年12月、平虜大将軍・総兵官として甘州・涼州に出向し、ボライの侵攻を防御する任に就きましたが、天順2年（1458年）には、ボライが涼州に侵入した際、城門を閉ざして出戦せず、敵が略奪に飽きて去るのを傍観するという失態を演じました。この責任を問われ、弾劾を受けて罷免され、郷里に隠居することとなりました。その後、まもなく復帰し、再び神機営を管掌しました。

柳溥は、天順5年3月癸丑（1461年4月22日）に亡くなりました。諡は武粛といい、その生涯は波乱に満ちたものでした。子の柳承慶が早世したため、孫の柳景が安遠侯の爵位を嗣ぎました。

柳溥の生涯は、明代の軍事における一側面を浮き彫りにしています。彼の功績と過ちは、歴史の教訓として後世に語り継がれるべきでしょう。

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