柴田桂太

柴田 桂太

明治10年（1877年）9月20日に東京府で生まれた柴田桂太は、昭和24年（1949年）11月19日に72歳で生涯を閉じた、日本の植物生理学、生化学、微生物化学の分野における先駆的な研究者であり、高名な教育者でした。彼は、薬学者として著名な柴田承桂の長男として生まれ、化学者の柴田雄次を弟に持ちます。また、後に文化功労者となる薬学者の柴田承二の父でもあり、学術一家の一員でした。

その学術的なキャリアは、1899年に東京帝国大学理科大学植物学科を卒業したことから始まります。卒業後、彼は教育の道を歩み、第一高等学校および東北帝国大学で教鞭を執り、教育者としての基礎を築きました。

1910年、柴田は母校である東京帝国大学に講師として戻ります。そして、その直後には、当時の最先端の植物生理学を学ぶためドイツへの留学を決断します。留学先では、著名な植物生理学者であるヴィルヘルム・ペッファーに師事し、深い専門知識と研究手法を習得しました。この海外での貴重な経験は、帰国後の彼の研究活動と日本の学術界における貢献に大きな影響を与えることとなります。

1912年に帰国すると、東京帝国大学の助教授に就任します。この時期に、彼は日本の科学史において画期的な取り組みを行います。それは、国内で初めて植物生理学と生化学の分野を独立させた講座を開設したことです。これにより、これらの分野が明確な学問領域として確立され、多くの後進の研究者たちが育つ基盤が築かれました。これは、当時の日本の大学における学問分野の多様化と深化を示す重要な出来事でした。

研究者としての柴田の功績は多岐にわたります。特に植物に含まれるフラボン体の研究は高く評価され、1918年にはその業績に対して学士院恩賜賞が授与されました。同年には教授に昇進し、研究室を率いて活発な研究活動を展開しました。その後も、植物の受精プロセスや胚発生のメカニズムに関する研究に取り組み、植物の生命現象の根本的な理解に貢献しました。また、生化学分野では、田宮博との共同研究によって行われたチトクロームに関する研究が、世界水準に達する画期的な成果を生み出しました。これらの研究成果は、日本の植物生理学および生化学の研究水準を一気に向上させる原動力となりました。

1938年に東京帝国大学を定年退官した後も、柴田の研究への情熱が衰えることはありませんでした。彼は岩田植物生理学研究所や徳川生物学研究所といった機関で引き続き研究活動に従事し、新たな知見の探求を続けました。さらに、1941年には資源科学研究所の所長に就任し、研究機関の運営や日本の科学振興においても指導的な役割を果たしました。

柴田桂太は、教育者として新しい学問分野の基礎を築き、研究者として国際的に評価される成果を挙げた、日本の近代科学史における重要な人物です。彼が生涯をかけて築き上げた植物生理学と生化学の基盤は、今日の日本の生命科学研究に多大な影響を与えています。

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