栃尾 (長岡市)

栃尾

新潟県のほぼ中央、長岡市北東部に位置する栃尾は、2006年に長岡市と合併するまで独立した市として栄えた地域です。この地は、戦国時代の武将である上杉謙信が青年期を過ごし、旗揚げを行った場所として知られており、その歴史的背景は地域の大きな特徴の一つとなっています。また、清らかな湧水が豊富に得られることや、名産の油揚げ（「栃尾のあぶらげ」として親しまれています）でも広く知られています。

地理的には、刈谷田川と西谷川が合流する地点を中心に市街地が広がっています。かつて栃尾城の城下町として発展した中心部には、雪国の生活の知恵である雁木（がんぎ）が今も数多く見られます。1990年代後半からは、新潟大学工学部との連携による雁木を活かしたまちづくりプロジェクトが進められており、歴史的な景観の保全と活用が図られています。

長岡市への編入以降も、栃尾地域では様々な出来事がありました。2008年にはNHK大河ドラマ「天地人」のロケ地となり、同年には地域のマスコットキャラクター「あぶらげんしん」が誕生しました。自然災害としては、2011年7月の新潟・福島豪雨で塩谷川流域での家屋浸水や各地での崖崩れ、2017年7月の梅雨前線豪雨では県道栃尾山古志線が寸断され、特に半蔵金地区で甚大な被害が発生し、1年以上にわたり通行止めが続きました。県道は2018年11月に復旧しています。一方で、地域の暮らしを支える施設整備も進み、2012年には越後とちお温泉「おいらこの湯」や子育て支援施設「すくすく」が開設。2014年には地域交流拠点「とちパル」がオープンしました。2020年には災害時にも対応可能な防災ヘリポートが整備され、2022年には図書館やホールを備えた地域交流拠点施設「トチオーレ」が開館しています。旧栃尾市役所を利用していた栃尾支所も、建物の老朽化に伴い2024年9月に改修された旧栃尾文化センターへ移転し、市民サービスを提供しています。交通面では、2019年に越後交通バスの一部路線が廃止され、予約制の乗合タクシーによる代替輸送が開始されました。

地域の人口は、国勢調査の結果を見ると減少傾向が続いています。1950年には39,029人のピークを記録しましたが、その後は一貫して数を減らし続け、2015年にはピーク時の半分以下となりました。さらに、2015年時点での高齢化率は38.3%と、長岡市全体の平均や新潟県全体の平均と比較しても高い水準にあります。

商業施設については、大型のショッピングモールは設けられていません。中心部の雁木通りには昔ながらの商店が軒を連ねていますが、閉店する店も少なくありません。地域内にはスーパーマーケットの原信栃尾店、複合商業施設「トッピィ」、DIY用品店のコメリ、複数のコンビニエンスストア（24時間営業でない店舗も含む）、ドラッグストアなどが点在しています。

金融機関としては、第四北越銀行や大光銀行（ATMのみ）、複数のJA支店、そして多くの郵便局が地域住民の生活を支えています。

交通網は、かつて栃尾駅があった場所に越後交通の営業所が置かれ、長岡方面への路線や地域内のバス路線が運行されていますが、前述のように一部は乗合タクシーに転換されています。道路は国道や県道が市内を通り、道の駅R290とちおは休憩や情報発信の拠点となっています。

栃尾地域には多くの名所旧跡や観光スポットがあります。謙信公ゆかりの栃尾城跡、秋葉神社や謙信像がある秋葉公園、名水百選に選ばれた杜々森湧水を擁する杜々の森名水公園などが代表的です。また、狛猫が珍しい南部神社や、源義経を追う静御前の墓とされるものが伝わる高徳寺といった寺社仏閣もあります。文化施設としては長岡市栃尾美術館があります。

年間を通じて様々な祭事やイベントも開催されています。冬季の裸押合大祭（2月）、男性器を象った御神体で知られるほだれ祭（3月）、諏訪神社の春季大祭・大名行列（4月）、とちお祭（樽みこし綱引き、花火など、8月）、イルミネーションイベントのトチオノアカリ（9月）、守門マラソン（10月）など、地域に根ざした多様な催しが行われています。

レジャー施設としては、冬季はとちおファミリースキー場、グリーンシーズンには道院自然ふれあいの森でキャンプや夏スキー、ハイキングなどが楽しめます。また、栃尾フィッシングパークでの釣りや、守門岳登山といった自然を満喫できるアクティビティも人気です。

温泉施設には、日帰り入浴が可能な「おいらこの湯」や、高齢者福祉施設ですが一般利用もできる「皆楽荘」があります。

栃尾地域にゆかりのある人物としては、プロ野球選手、歌手、アナウンサー、造型師・キャラクターデザイナー、俳優、政治家など、多分野で活躍した方々がいます。

また、栃尾は様々な作品の舞台やロケ地にもなっています。地域出身者が自主制作したご当地ヒーロー特撮ドラマ『炎の天狐 トチオンガーセブン』は有名です。その他、『モノクロームの少女』や、雪原のシーンで使われた『小さいおうち』、主人公の実家などのロケが行われた『愛しのアイリーン』といった映画の撮影地としても利用されています。

歴史と自然、そして温かい人情が息づく栃尾地域は、名物の油揚げとともに、訪れる人々に独特の魅力を伝えています。

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